ベトナムでは、2020年のコロナ禍初期に、徹底した行動制限を敷いたことで、感染拡大を阻止したものの、感染者の増減を繰り返しています。そこで、さらなる拡大を防ぐために、人々の外出制限や工場隔離などを実施。右肩上がりの経済成長にも影響が出始めています。そこで、ロックダウンがもたらした影響を通じて、ベトナム国民の現状を解説したいと思います。

ベトナムはロックダウンでどんな影響を受けている?

ベトナムでは、新型コロナウィルスの感染拡大を封じ込めるため、早期から外国人の入国制限、学校や会社の休業・休校措置、不要不急の外出制限を徹底してきました。

ベトナムの新型コロナウィルス感染の状況

日本と比べると厳しいロックダウン政策が敷かれたことで、一時は完全にコロナウィルスを封じ込めたと世界から称賛されたベトナムですが、感染者は増減を繰り返しているのが現状です。2021年8月の時点で、感染者は累計34万8,059人、そのうち2.4%ほどの人が亡くなっているそうです。とくに感染拡大が深刻化しているのがホーチミンやビンズオンなどの南部。そのため南部都市を中心にロックダウンが延長されています。

国内総生産は前年同期と比較して大幅減

ベトナム統計総局によると、2021年7月から9月期のGDPは、前年の同期と比べて6.17%減少。2000年から順調に増加していたものの、今回の新型コロナウィルスの影響により、初めてのマイナスとなりました。とくに、ベトナム最大の商業都市であるホーチミン市におけるロックダウンが長らく続いたことが、GDPの減少の要因となったようです。

ベトナム・ロックダウンの影響①:製造業

ベトナムは外資系を含めて製造業の進出が著しい国。そのため製造業に与えた影響は大きかったようです。

ロックダウン下の工場も隔離の対象

ベトナム政府は、製造業の企業に対して、従業員の移動を制限するため、工場内に寝泊まりすることを要請。その結果、家族と離れて暮らすことを余儀なくされるベトナム人が増えました。専門的なスキルがある場合を除いて、基本的に工場労働者の賃金は高くありません。ベトナムでは、仕事を辞めても再就職はそれほど困らないのですが、現在は働き口が限られているため、やむを得ず工場勤務を選ぶ人も多いそうです。

隔離の基準を満たせず廃業するケースも

工場隔離も含めて、さまざまな条件を満たさないと、工場を稼働させることはできません。そのため、閉鎖を余儀なくされる工場も少なからずあります。外資系の工場は、本社の従業員の国境を超えた往来が難しくなったことで、工場の稼働停止を選択するケースが目立ちます。稼働停止は、韓国、中国、アメリカ、ヨーロッパのほか、日系企業も含まれています。稼働停止が増えることで、低所得の工場労働者の収入にも影響が出てきています。

ベトナム・ロックダウンの影響②:飲食店

ベトナムでは、外出制限の影響もあり、コロナ禍が始まってすぐに影響を受けたのが飲食店です。

2021年5月から店内飲食が禁止

ベトナムの都市部では、市中感染が目立っていることから、店内で飲食することが定期的に禁止されてきました。テイクアウトやデリバリーについてはOKですが、自粛ではなく禁止という点では、日本よりもはるかに厳しい措置が講じられています。飲食店に加えて、美容室や床屋も同様に、営業の停止を命じられました。ベトナム人は、自宅で大人数のパーティーを開催するのが定番なのですが、そのような会食も禁止されています。

ベトナムの飲食店は衛生面が課題

もともとベトナムの飲食店は、店内にハエが飛んでいる、おかずを使いまわす、ためた水で皿を洗うなど、決して衛生的な環境にあるとは言えませんでした。そのため、ひとりで静かに食事をする場合も、感染のリスクがあるような印象があります。ルールを守ることが得意ではない国民性もあり、小規模なお店では、日本のように換気、消毒、パーテーションなどを徹底することは難しいかもしれません。こうしたことを鑑みて、営業停止という厳しい指令が出たと思われます。

ベトナム・ロックダウンの影響③:スーパー・ショッピングモール

新型コロナウィルスの感染が確認された当初、外出を自粛するベトナム人も多く、大手のスーパーやショッピングモールは閑散とした状況になりました。

右肩上がりだった売り上げは減少

その後も、たびたびロックダウンや営業制限がかけられたこともあり、売り上げが減少しています。今年に入るとその影響はさらに大きくなり、前年度と比べると5月は4.1%減、6月は2.0%減という結果になりました。ベトナムでは、中産階級の増加により消費が拡大していたこともあり、日本でも多くの企業が市場に進出。地方自治体などでも、ベトナム進出の支援がさまざまに行われていました。しかしながら、コロナ禍の影響により白紙に戻ったケースも多いようです。

移動販売をする大手スーパーも登場

ベトナム都市部には、スーパーやコンビニが至るところにありますが、さまざまに工夫を凝らして営業を継続しています。たとえばイオンモールでは、日本と同じように「ソーシャルディスタンス」を注意喚起。休憩用のベンチや飲食用のスペースは、密にならないように間引きされています。また、外出制限の便宜を図るため、市内を移動販売するスーパーも登場。ロックダウン期間中は、臨時の販売所で生活必需品が買えるようになっています。

まとめ

ベトナムでは、日本よりも厳しい行動制限や工場などの隔離が行われています。そのため、操業停止や倒産、企業規模の縮小などにより職を失うベトナム人も多く、収入が減少する家庭も少なくありません。ただ、新型コロナウィルス終焉後の経済回復に対する期待度は高く、投資額は増えているということです。経済の停滞は見られるものの、新規事業等の準備期間と位置づけることもできるでしょう。

この記事を書いた人

ひこすけ

大学にて10年間勤務したのち、ベトナム現地企業にて、地方中小企業の販路拡大支援に従事する。大学では留学生、ベトナムでは現地スタッフ指導経験あり。日本語教育にも関わっていました。現在はライターとして活動中。

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