法人インタビュー

寒川ホーム 様

即戦力ではなく、“将来のための採用”を!

即戦力ではなく、“将来のための採用”を!ベトナム人女性3名・男性1名を同時採用

介護の楽しさや喜びを知ってもらえる、受け入れ体制や環境づくりが成功ポイント

寒川ホーム(神奈川県)

特別養護老人ホーム

副施設長 今村真様、吉田由紀様

日本人スタッフへの刺激にもなる採用に

1992年に神奈川県・寒川地区初の介護施設として開業された寒川ホームさんは、介護老人福祉施設の運営や短期入所生活介護、通所介護などを行っています。

将来の介護人材不足を見据えたうえで、「日本人スタッフが多いうちに外国人材を採用しておかないと、教育などで苦労するだろう」と考えて、採用に踏み切ったそうです。

「即戦力ではなくて、“今後のための採用”という位置づけでスタートしました。

外国人材は『一生懸命がんばる』というイメージがあったので、若い日本人スタッフも刺激を受けて成長してくれることも期待していました」

また、「国籍を問わずにコミュニケーションが図れる人材が育てばいいな」という願いもあったといいます。

「しかし、外国人材に関する知識はゼロで……。採用方法などを悩んでいたところ、取引先の福祉用具会社さんから『ユアブライトさんなら、紹介人材の質も高く、アドバイスなどのやり取りがこまめ』とオススメされました。

いろいろな施設を見ている福祉用具会社さんならば、“見る目”は確かだろう。そう考えて、依頼することに決めました」

まずは、介護の楽しさや喜びを知ってほしい

受け入れにあたって、既存スタッフの皆さんの不安をなくすために、まず採用の必要性をきちんと説明したそうです。

「勉強会を開いて、『なぜ、いま外国人材を採用するのか』などについて伝えました。

また、そのときに強調したのが、『あくまでも、即戦力ではない』という点です。『まずは、介護の仕事の楽しさや喜び、素晴らしさを知ってもらおうね』という共通認識をみんなが持てるようにしました」

そして、2021年夏、ベトナム人女性3名・男性1名の入社が決定。4名を同時採用した理由は、「さみしい思いをせず、安心して働けるような環境でお迎えしたかったから」だそうです。

「また、新しい仕事や職場で働く不安を少しでもなくすために、できるだけ気持ちよく働ける“ウェルカムな体制づくり”を心がけました。

たとえば、施設の廊下にベトナム語で書かれた装飾を飾ったり、“自分が好きなベトナムのもの”などを書いた日本人スタッフの顔写真を貼ったり――。

4名全員に『いいところに来てよかったな』『介護っていいな』と思ってもらえるように、お迎えする環境を準備していきました」

受け入れ体制を整えていたこともあって、入社直後は緊張ぎみだった4名も、あっという間に職場に馴染んだそうです。

「仕事以外の日常生活で困りそうなことも、すべてお手伝いするようにしました。住居はユアブライトさんが探してくださって、それ以外で生活に必要な家電や日用品を一緒に買いに行くなど、できる限りサポートしました」

「わからない」と言うことの大切さを伝える

実際に一緒に働き始めて、ベトナム人スタッフの“真面目さ”に驚いたようです。

「みんなに共通しているのが、『本気で日本に働きに来ている』『介護の仕事を早く覚えよう』という姿勢です。

本当に真面目で、一生懸命で、礼儀正しい。その一言に尽きますね。すべてにおいて毎日がんばっているので、逆に私たちが心配になってくるほどです(笑)」

仕事をするうえでは、「わかるまで、必ず聞いてください」ということを徹底しているといいます。

「『わからない』と言うことは、恥ずかしいことでもないし、お給料を減らされることもないと、いつも伝えています。

また、『介護の仕事は“ヒトとヒトとの仕事”だから、絶対にわかるまで聞いてね』『わからないままで、絶対に1人で動かないでね』ということも徹底させています」

日本人スタッフやご利用者さまにも変化が

入社半年ほどで夜勤もできるようになるなど、日本人スタッフと変わらないスピードで成長している4名。一緒に働く日本人スタッフにも変化が!

「4名全員がにこやかで、性格も良いので、周りのスタッフも自然に笑顔になれているなと感じています。

また、4名が本当に一生懸命がんばっているので、日本人スタッフもいい刺激を受けているようです」

ご利用者さまとの関係もうまくいっているそうです。

「『クレームなどもあるかな……』と最初は心配していましたが、そういうお話は1件もなくて、『外国人の若い子が来て、うれしい。楽しい』と皆さんおっしゃっています。

ご利用者さまにベトナム語を教えている光景を見ていると、『とてもいい時間が流れているな』と感動しますね」

“事前準備”が採用成功のカギに

「いい介護の人材が入ってくれた」と心強く感じているというお二人に、ほかの事業者さんへのヒントにもなる“外国人材採用の成功ポイント”をお聞きしました。

「採用の準備段階で、すべてが決まってしまうなと実感しています。

やはり、今後の介護業界の課題や、外国人材採用の必要性、そして『介護スタッフの仲間が増えるんだ』といったことを既存スタッフ全員が理解してくれていなければ、受け入れはうまくいかなかったと思います。

また、『最初は、あくまでも即戦力の介護士ではない』ということを全員が理解していないと、入社後の定着に失敗する可能性があるかもしれません。

さらに、リーダーや多くのスタッフを交えながら、みんなで受け入れ体制や『歓迎している』という雰囲気をつくっていったこともよかったですね。外国人材の採用が『全員に関係あること』という共通認識ができたと思います」

今回の4名の採用・育成が順調なことで、今後も毎年男女1名ずつのペースで外国人材の採用を続けていく予定です。

「4名とも素敵な子たちなので、ずっと一緒に働いてほしいなと思っています。

もしベトナムに戻りたいということになったら、もちろん尊重しますが、ずっと残ってほしいというのが本音ですね。

そして、4名が、新しく入ってくる外国人スタッフの教育担当やリーダーになっていってくれればと期待しています。このまま、これからも採用の良い循環をつくっていきたいです」

自分たちの“ルール”を壊すことも大切

外国人材採用について、「すごくいい仲間たちに出会えて、ありがたい機会をいただけた。ほかの事業者の方にもオススメしたい」というお二人。採用を行ううえで、「自分たちの“ルール”を壊すことも大切だ」というアドバイスも。

「外国人材の方は、生まれ育った環境や文化が日本とはちがいますから、“どうしても変えられない”部分もあるはずです。そういう点をはじめ、私たち施設側は柔軟に対応しなければいけないと思っています。

たとえば、私たちは日常的なサポートを行うために、現場のリーダークラスのベテランスタッフ4名とのグループLINEもつくって、仕事中でもいつでも困ったことがあれば相談できるようにしています。

これも、『職場でのスマートフォン使用は禁止』という既存のルールを変えたものです。

また、みんなまだまだ敬語の使い方が下手なのですが(笑)、まずは敬語よりも、言い方や配慮が大切にできていればいいんじゃないかと考えるように意識を変えました。

日本人・外国人に関係なく、スタッフに寄り添って柔軟に変わっていくことも、今後の介護業界の人材確保や育成に大事なのだろうと思います」

ちなみに、自由な髪型やネイル、服装などにも柔軟に対応しているという寒川ホームさん。最近、外国人の女性スタッフ3名が髪を茶色に染めたそうです。

「その様子を見て、『この環境に慣れてきたのかな』『おしゃれにも気をつかう余裕ができてきたんだな』と、うれしくなりました」

そう語って目を細めるお二人の姿が、とても印象的でした。

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