近年、労働者の人手不足を補うために外国人雇用の枠組みが広がっています。高度人材もその一つです。特定の分野に精通した専門知識や技術を有する外国人を指し、即戦力の確保だけでなく企業へのイノベーションが期待できます。

ここでは、高度人材の外国人を採用する際、必要な在留資格の流れについて説明します。

高度人材とは?採用のメリットとは?

高度人材とは、一般的に特定の分野に精通した知識や専門技術を有する外国人のことをいいます。

近年、日本では労働人口の減少に伴い、新たな労働の担い手として外国人労働者の受け入れ枠の拡大を実施してきました。高度人材もその一つです。

2012年から開始した「高度人材に対するポイント制による出入国管理上の優遇制度」(ポイント制)により、現在では「学歴」「職歴」「年齢」「年収」といった要素で一定以上のポイントを獲得した外国人は、「高度専門職」の在留資格と出入国管理上の優遇措置が与えられます。

高度人材の3つの分類

具体的には、以下の3つの分類に当てはまる活動が高度人材の対象となります。

高度学術研究活動「高度専門職1号(イ)」

日本の公私の機関との契約に基づいて行う研究、もしくは研究の指導または教育をする活動

高度専門・技術活動「高度専門職1号(ロ)」

日本の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学又は人文科学の分野に属する知識、または技術を要する業務に従事する活動

高度経営・管理活動「高度専門職1号(ハ)」

日本の公私の機関において事業の経営を行い、または管理に従事する活動

引用:高度人材ポイント制とは?|出入国在留管理庁

高度専門職における2つの区分

高度専門職の在留資格は、その取得の年月によって1号と2号に分けられます。高度専門職2号のほうがより優遇措置を受けることができ、1号での活動を3年以上行っていた人が対象となります。

高度専門職1号の優遇措置は次の通りです。

・複合的な在留活動を許可

・在留期間は5年間付与

・永住許可要件の緩和

・配偶者の就労

・条件を満たした場合、親の帯同を許可

・条件を満たした場合、家事使用人の帯同を許可

・入国および在留手続きの優先処理

高度専門職2号の優遇措置では、高度専門職1号で受けていた優遇措置に加えて、以下が与えられます

・ほぼすべての就労資格の活動が許可される

・在留期間は無期限

企業が高度人材を採用するメリット

高度人材を受け入れるにあたって、政府は以下のように高度人材を定義しました。

“「国内の資本・労働とは補完関係にあり,代替することが出来ない良質な人材」であり,「我が国の産業にイノベーションをもたらすとともに,日本人との切磋琢磨を通じて専門的・技術的な労働市場の発展を促し,我が国労働市場の効率性を高めることが期待される人材」(出展:平成21年5月29日高度人材受入推進会議報告書)”

つまり高度人材とは、通常の採用活動では出会うことが難しい専門性の高い経験・知識を有しており、かつ技術の発展やサービスの品質向上、事業の創出といった経営活動にポジティブな影響をもたらす外国人労働者を想定しています。

高度人材を採用することで、企業は事業の戦略強化を図ることができます。また、日本社会とは異なるバックグラウンドを持った社員の意見は、多様な視点を組織に示してくれるでしょう。さらに高度専門職2号を取得できれば、在留期限に定めがなくなります。また、永住ビザにもつながる在留資格であるため、安定的な継続雇用を期待できるでしょう。

Businesswomen discussing over desktop PC in office. Female colleagues are looking in computer monitor. They are at workplace.

高度人材の申請手続きの流れを解説!

ここからは、高度人材の外国人を雇用する際に必要な在留資格の手続きについて見てみましょう。

在留資格を申請する流れは、雇用予定の高度人材外国人が、海外にいる場合と国内に滞在している場合で異なります。

雇用予定者が海外におり、日本に入国予定の場合は「在留資格認定証明書交付申請」を取得。すでに国内に在留している場合は「在留資格変更許可申請」または「在留期間更新許可申請」を行います。

これから日本に入国する場合

雇用予定の外国人本人がまだ海外におり、就職のために日本に入国するケースでは下記の流れで「在留資格認定証明書交付申請」を行います。

1.地方入国管理局にて在留資格認定証明書交付申請を行う

申請の際は、高度専門職1号の(イ)(ロ)(ハ)のいずれかを選んで申請します。申請は、本人もしくは受け入れ予定の企業から行えます。

またあわせて、高度外国人材認定の申請を行います。「ポイント計算表」および「ポイントを立証する資料」の提出が必要です。

在留資格認定証明書交付申請書は、出入国在留管理庁のホームページからダウンロードできます。

2.出入国管理庁で上陸条件の適合性が審査される

1で提出した申請内容をもとに、出入国管理庁が外国人本人の上陸条件の適合性を審査します。審査で在留資格が許可された場合は「在留資格認定証明書」が交付されます。

なお、高度専門職の在留資格に該当しない場合でも、他の就労可能な在留資格の条件に適合するケースもあります。

3. 外国人本人が在外公館にて査証の手続きを行う

発行された在留資格認定証明書をもって、本人が最寄りの日本大使館、総領事館等にて査証(ビザ)の申請を行います。査証が発行されたら、パスポート、査証、在留資格認定証明書をもって入国し、問題がなければ空港での上陸審査時に在留資格が発行されます。

すでに日本に在留中の場合

本人が日本に滞在している場合は、なんらかの在留資格を有していることになります。もし高度専門職以外の在留資格を持っていれば、在留資格の切り替えが必要になるため「在留資格変更許可申請」を行います。

在留資格変更許可申請書は、出入国在留管理庁のホームページからダウンロードできます。

高度専門職の在留資格を有しているものの、残された在留期間が短い場合には「在留期間更新許可申請」を行います。手続きの流れは、両方とも同様です。

在留期間更新許可申請書は、出入国在留管理庁のホームページからダウンロードできます。

1.地方入国管理局にて申請を行う

在留資格変更許可申請、もしくは在留期間更新許可申請の申請書と一緒に、「ポイント計算表」と「ポイントを立証する資料」を提出します。

2.出入国在留管理庁で審査される

高度人材の審査では70ポイント以上に達していることが条件です。「学歴」「職歴」「年収」「年齢」に応じて基礎点がつくほか、研究実績や職位、海外での資格、日本国内での学歴に応じてボーナス点が加算されます。

ポイントにあわせて、「行おうとする活動が高度外国人材としての活動であること」「在留状況が良好であること」も審査の対象となります。

参考:ポイント計算表|出入国在留管理庁

3.在留資格交付

出入国在留管理庁による審査で適合と認められれば、高度専門職の在留資格が交付されます。なお、申請が不許可となった場合でも、既存の在留資格の滞在期限が残っている場合は、在留期間中は滞在が可能です。

高度人材に関連する申請に必要な書類

高度専門職の在留資格の申請では、1号か2号の申請によって申請書類が異なります。

高度専門職で在留する場合

申請する在留資格と状況に応じて申請書を選択します。(「〇」をクリックすると、それぞれの申請に必要な詳細資料をご確認いただけます)

申請書 状況 高度専門職1号 高度専門職2号
 在留資格認定証明書交付申請 海外から申請  
在留資格変更許可申請 国内に滞在中
 在留期間更新許可申請  

必要資料一覧

   在留資格認定証明書交付申請 在留資格変更許可申請 在留期間更新許可申請  
各種申請書
写真(縦4cm×横3cm) ※直近3か月以内に撮影されたもの
返信用封筒1通    
本邦において行おうとする活動に応じて,入管法施行規則別表第3の「教授」から「報道」まで又は「経営・管理」から「技能」までのいずれかの在留資格の項の下欄に掲げる資料
 ポイント計算表 〇  
ポイント計算表の各項目に関する疎明資料
申請人のパスポート及び在留カード  

高度専門職2号のみ必要となる資料

直近(過去5年分)の申請人の所得及び納税状況を証明する資料(住民税、源泉所得税等その他国税、預金通帳の写し)

・申請人の公的年金及び公的医療保険の保険料の納付状況を証明する資料

高度人材の関係者(配偶者や子、家事使用人等)

高度専門職の在留資格が創設される以前は、高度人材は「特定活動」の在留資格を経て滞在していました。これを受け、高度人材の配偶者や子、または家事使用人などが在留資格を申請する場合、高度人材の外国人本人が「高度専門職の在留資格」か「特定活動の在留資格」かによって、申請する書類が異なります。

高度専門職の高度人材の配偶者(就労するケース)

高度専門職の在留資格を有した高度人材の配偶者で、就労する場合は以下の書類に基づき申請を行います。いずれにしても、婚姻関係を証明するための戸籍謄本や結婚証明書が求められます。

また、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請の場合は、就労を行うにあたり従事する活動内容や必要とされる学歴・職歴の証明が必要です。

在留資格認定証明書交付申請

在留資格変更許可申請

在留期間更新許可申請

特定活動の高度人材の配偶者又は子

特定活動の在留資格で滞在する高度人材の配偶者や子が在留資格を申請する際は「扶養を受けているか」「就労をするか」によって申請する書類が異なります。

扶養されるケース

在留資格認定証明書交付申請

在留資格変更許可申請

在留期間更新許可申請

配偶者が就労するケース

在留資格認定証明書交付申請

在留資格変更許可申請

在留期間更新許可申請

高度人材の親または配偶者の親

通常であれば就労のために滞在する外国人の親の帯同は認められていませんが、高度人材の場合、7歳未満の子がいる場合や、高度人材の外国人本人が妊娠中の場合、もしくは配偶者が妊娠している場合に、その介助を目的として親が来日することも可能です。

在留資格の取得にあたっては、高度人材の世帯年収が800万円以上であることとされています。家族関係を証明する戸籍謄本等の書類のほか、高度人材および配偶者、子のパスポートや在留カードの写し、高度人材と同居を明らかにする書類の提出が求められます。

an asian chinese family bonding time at public park during weekend leisure time in the morning

高度専門職で本人が滞在している場合

在留資格認定証明書交付申請

在留資格変更許可申請

在留期間更新許可申請

特定活動で本人が滞在している場合

在留資格認定証明書交付申請

在留資格変更許可申請

在留期間更新許可申請

高度人材の関係者(家事使用人)

高度人材の外国人には、家事使用人の帯同が認められています。家事使用人は、以下の3つに分かれており、それぞれに適した申請書を用意します。

入国帯同型

高度人材の本人と共に入国します。滞在中、雇用主を変更することはできず、雇用主と共に出国が想定されています。

家庭事情型

高度人材本人に13歳未満の子がいることを理由に雇用される家事使用人です。滞在中、雇用主の変更が認められますが、雇用主の子が13歳に達したり、家事に従事する理由が消滅したりするケースでは、在留期間の更新を受けられません。

金融人材型

投資運用業務等に従事する高度人材に雇用される家事使用人を指します。高度人材の世帯年収などの条件を満たしていれば、そのほか、雇用主と共に出国することなどの要件は求められません。

申請の際は、高度人材が高度専門職の在留資格か特定活動の資格かによって、申請書類が異なります。出入国在留管理庁のページから確認しましょう。

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高度人材にあてはまる外国人は、高い技術や専門性を有しており、即戦力として企業への貢献が期待できます。また、雇われる側も高度専門職としての優遇措置により、長期安定雇用が期待できるため、双方にとってメリットのある在留資格といえるでしょう。

この記事を書いた人

ヤマシタハヤト

ユアブライト株式会社 海外人材担当 主にベトナムに関する情報を発信しております。

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