外国人スタッフと一緒に働いていると、「なかなか謝ってくれない」と感じる場面があるかもしれません。その背景がわからず、対応に困ってしまうこともあるのではないでしょうか。しかしながら、謝罪に対する感覚は国や文化によって大きく異なり、日本のように頻繁に謝る国はむしろ少数派とも言われています。そこで、本記事では世界各国の謝罪文化をランキング形式で比較しながら、外国人が謝らないように見える背景と、特にベトナム人社員との円滑なコミュニケーション方法について解説します。

世界の謝罪文化①:日本は「謝りすぎる国」だった

「外国人が謝らない」と感じるとき、まず振り返りたいのが日本人自身の謝罪習慣でしょう。世界的に見ると、日本の謝罪頻度はかなり特殊な部類に入るからです。

日本人の謝罪頻度は世界トップクラス

日本語には「すみません」「申し訳ございません」「ごめんなさい」など、謝罪に類する表現が非常に豊富です。ビジネスの場面では、メールの冒頭に「お忙しいところ恐れ入りますが」と添えたり、電話の第一声で「お待たせして申し訳ございません」と述べたりすることも日常的でしょう。こうした習慣は、英語圏やアジアの他の国々と比べても突出しています。

「すみません」は謝罪ではなくあいさつ

日本語の「すみません」は、純粋な謝罪だけでなく感謝や声掛けの意味でも広く使われているのが特徴的でしょう。たとえば、道を教えてもらったときの「すみません、ありがとうございます」や、店員を呼ぶときの「すみません」は、英語に直訳すると謝罪とは無関係な場面です。そのため、日本人は自覚なく一日に何度も「謝罪の言葉」を口にしており、その感覚を外国人にも期待してしまう傾向があります。

日本の謝罪文化は海外から特異に映る

海外のビジネスパーソンの中には、日本人の頻繁な謝罪に驚く人も少なくありません。「なぜ自分が悪くない場面でも謝るのか」という疑問を持つ外国人は多く、日本独特のコミュニケーション作法として注目されることもあります。一方、日本側から見ると「なぜ謝らないのか」と映るわけですが、これは文化の優劣ではなく、謝罪という行為に込める意味が違うからです。

世界の謝罪文化②:謝らない国ランキングと各国の事情

ここからは、世界各国の謝罪文化をランキング形式で見ていきましょう。とはいえ、「謝らない」という表現はあくまで日本と比較した際の相対的な印象であり、各国にはそれぞれの合理的な背景がある点を押さえておく必要があります。

謝罪が少ない国にはそれぞれの事情がある

以下は公式なランキングではなく、文化的傾向をもとにした編集部の整理です。日本と比較して謝罪の頻度が低いと言われている国には、アメリカ、中国、フランス、ドイツ、中東圏の一部の国々が挙げられるでしょう。アメリカでは訴訟社会の影響から不用意な謝罪を避ける傾向があり、中国では面子(メンツ)を重視する文化が謝罪のハードルを高くしています。また、フランスやドイツでは個人の意見を明確に主張する文化が根づいており、「間違いがなければ謝る必要はない」という考え方が一般的です。中東圏の一部の国々では、宗教的な価値観として「神の意志」に帰属させる思考様式があり、個人の過失として謝罪する場面が限られるという傾向も見られます。

欧米圏では謝罪が法的責任の承認になりうる

特にアメリカやイギリスなど英語圏のビジネスシーンでは、安易な謝罪が法的責任の承認と見なされるリスクがあります。そのため、問題が発生した際に求められるのは「I'm sorry」ではなく、原因の特定と再発防止策の提示です。しかしながら、彼らにとっては解決策を示すことこそが誠実な対応だという認識があるため、単に「謝らずに言い訳ばかりする」と見なすのは早計でしょう。

アジア圏でも謝罪の意味は国ごとに異なる

「同じアジアだから謝罪観も似ているだろう」と考えるのは短絡的かもしれません。韓国では日本と同様に謝罪表現が豊富ですが、中国やベトナムでは面子の概念が強く、公の場での謝罪は大きな屈辱と捉えられることがあります。また、タイやフィリピンでは「マイペンライ(気にしないで)」「バハラナ(なるようになる)」といった表現に象徴されるように、問題を深刻化させずに受け流す文化が存在します。フィリピンの「バハラナ」の背景には、「バタラ(神)」に由来する運命を受け入れる信仰的な価値観があるからです。そのため、アジア圏だからといって一括りにせず、国ごとの文化的背景を把握する姿勢が求められるでしょう。

世界の謝罪文化③:外国人が謝らない本当の理由

「謝らない国ランキング」を見てきましたが、実際の職場で問題になるのは「なぜ目の前の外国人社員が謝らないのか」という具体的な疑問でしょう。その理由は、文化・言語・組織の3つの軸で整理することができます。

非を認める文化と解決策を示す文化に分かれる

日本では、まず「申し訳ございません」と非を認めることが信頼回復の第一歩と考えられています。一方、多くの国では非を認めるよりも「今後どうするか」を示すことが重視されるでしょう。そのため、外国人社員がミスの後に謝罪の言葉なく改善策を語り始めると、日本人管理者は「反省していない」と感じてしまうかもしれません。とはいえ、これは誠意の欠如ではなく、誠意の表し方が異なるだけだという点です。

言語構造が謝罪表現のハードルを上げる

日本語学習中の外国人にとって、場面に応じた謝罪表現を使い分けることは非常に難しい課題です。日本語の謝罪表現は微妙なニュアンスの違いを持っており、どの場面でどの表現を使うべきか判断に迷う外国人も少なくありません。加えて、母国語で考えたときに謝罪が必要な場面だと認識していなければ、日本語での謝罪表現が出てこないのは自然なことでしょう。

職場の上下関係が謝罪の壁になることもある

日本の職場では、部下が上司に対して謝罪するのは当然の行為として受け入れられています。しかしながら、国によっては上下関係における謝罪の意味合いが大きく異なります。たとえば、欧米圏では上司と部下の関係がよりフラットで、ミスに対しては役職に関係なく事実ベースで議論する傾向があるからです。また、東南アジアの一部の国では人前で叱責されること自体が大きな恥とされ、そこに謝罪を強要すると信頼関係が壊れてしまうこともあるため注意が必要です。

世界の謝罪文化④:ベトナム人社員との上手な付き合い方

ベトナム人が謝らない理由については「 ベトナム人が謝らないのはなぜ? 」でも詳しく解説しています。ここからは、日本企業で特に受け入れが多いベトナム人社員に焦点を当てて、具体的なコミュニケーション方法を紹介しましょう。

ベトナム人が謝らない背景には面子文化がある

ベトナム社会では「面子」が人間関係において非常に重要な位置を占めています。ベトナム語にも「xin lỗi」(ベトナム語で「誤りを請う」という意味の謝罪表現)がありますが、特に人前での謝罪は自分の面子を大きく傷つける行為と見なされがちです。そのため、本人に非があると理解していても、同僚や後輩の前では素直に謝れないという場面が生じやすいのでしょう。これは不誠実さの表れではなく、ベトナムの社会規範に基づいた振る舞いだと理解することが大切です。ベトナム人の面子文化やコミュニケーションの特徴については「 ベトナム人の特徴とは?性格・国民性を地域別に解説 」の記事もあわせてご覧ください。

責める前に原因を一緒に確認する姿勢が効果的

ベトナム人社員がミスをした場合、「なぜ謝らないのか」と問い詰めるよりも、「何が起きたのか一緒に確認しよう」という姿勢で臨むことをおすすめします。個室や1対1の場で、感情的にならずに事実を確認していくと、本人も状況を整理しやすくなるでしょう。実際に、原因が明確になった段階で自発的に「すみませんでした」と口にするベトナム人社員も多く見られます。大切なのは、謝罪を引き出すことではなく、問題の再発を防ぐための建設的な会話を優先するという点です。

信頼関係ができると謝罪の壁は自然に下がる

ベトナム人は、信頼を寄せている相手に対しては感情表現が豊かになる傾向があります。日頃から声をかけたり仕事ぶりを認めたりすることで心理的な距離が縮まると、ミスをした際にも素直に「ごめんなさい」と伝えてくれるようになるかもしれません。一方、信頼関係が築けていない段階で謝罪を要求しても、防衛的な態度を取られてしまう可能性があります。そのため、まずは日常的なコミュニケーションの中で信頼の土台をつくることが、結果として謝罪の壁を低くする最善の方法だと言えるでしょう。ベトナム人社員との信頼関係の築き方については「 ベトナム人社員への接し方|職場のマナーとコミュニケーション術 」の記事で具体的なテクニックを紹介しています。

まとめ

世界の謝罪文化を比較してみると、日本は「謝りすぎる国」であり、多くの国では謝罪よりも解決策の提示が誠意の表現として重視されていることがわかります。外国人社員が謝らないように見えるとき、その背景には文化的な価値観の違い、言語的な難しさ、そして面子や組織文化に関する認識の差が存在しているからです。

特にベトナム人社員と働く場面では、面子への配慮を忘れず、責めるよりも一緒に原因を確認する姿勢が信頼構築への近道となるでしょう。「報告と謝罪の分離」「心理的安全性の確保」「定期的な1on1」といった工夫を取り入れることで、国籍に関係なくチーム全体のコミュニケーション向上につながるはずです。文化の違いを障壁と捉えるのではなく、相互理解を深めるきっかけとして活かしていくことが、より強い組織づくりへの第一歩となります。

この記事を書いた人

ヤマシタハヤト

ヤマシタハヤト

ユアブライト株式会社 取締役 / 登録支援機関 実務責任者。特定技能・外国人材採用・登録支援・在留資格実務を専門領域とし、登録支援機関であるユアブライト株式会社の取締役として、外国人材紹介と受入れ支援の実務に関わっています。

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