ベトナムで働き早4年。日系企業、現地企業の両方での勤務経験をもつ私が感じた、ベトナム人のオフィスでの生態(?)とその他もろもろについて、自分なりの考察をしてみる。

ベトナムオフィスコーデ

日本であれば、スーツにワイシャツ、最近でこそノーネクタイも主流になりつつあるが、まだまだお堅いコーデで仕事に臨むのが一般的である。毎年入社してくる新社会人のぎこちないスーツ姿がまぶしく、自分の年齢を痛感する瞬間だったりする。

一方、ベトナム人のオフィスコーデはとにかく自由である。一言でいえば、皆「着たいものを着ている」のだが、その「着たいもの」の許容範囲が広い。男性はジーンズも当たり前で、ポロシャツや柄のあるワイシャツなどを着ているスタッフも多い。女性の場合、「おいおいパーティーにでも行くのか?」というようなフレアワンピース、クレイジーパターンのブラウスなどさまざまである。私は寒さ対策のため、よくジャケットを羽織って出社するが、たいていスタッフに「今日なんか大事な会議でもあるの?」と聞かれるのが常である。会社でお揃いのTシャツを作ったりする企業もあり、給料日には揃ってそのTシャツを着てくる、なんていう高校生の文化祭のようなテンションが漂っていることもある。とはいえ外周りの営業なんかはちゃんとワイシャツにスラックス、スカートがほとんどなのだが、その場合、ワイシャツは基本的にピチピチであり、スカートは基本的に膝上である。以前勤めていた企業には「出張規則」なるものがあり、出張時はサンダル禁止、ジャケットと襟付きのシャツを着用、タック入りのスラックスまたは派手でないスカートを着用すること、なんていう服装規定をわざわざ書かなければいけないほどであった。

とはいえ、「着たいものを着る」スタイルのベトナムオフィスコーデ、堅苦しいスーツ文化で育ってきた日本人からすれば、慣れればかなり快適で、お気に入りの服で出社しテンションを上げることだってできる優れものなのだ。

副業は当たり前

人にもよるが、ベトナム人はお金を稼ぐことにとても一生懸命だ。企業に勤める多くのベトナム人は、副業を持っている。会社で認められていない場合がほとんどだが、こっそりと副業を行っているのだ(バレている時点でこっそりもへったくれもない)。

今勤めている会社の若いスタッフに話を聞いてみると、化粧品の輸入販売だったり、自分の家で作ったスナック菓子をオンラインで売っていたり、なんと中には不動産を転がしている(!)強者までいて、バイタリティーの強さに驚かされた。「マンション買わない?」とコーヒーを飲みに行くテンションで不動産を勧めてくるのには閉口するが。

勉強熱心ベトナム人

副業の話題でも触れたが、ベトナム人はとにかくバイタリティーがある。仕事で疲れてぐったり、などということはほぼなく、定時を過ぎたら自己研鑽に勤しむ。語学を学びに行く者、ヨガに通ったりジムに行って体を鍛える者、マーケティング論や経営論を学ぶため専門学校の夜間部に行っている者など、とにかく勉強熱心なのである。基本的に英語が話せるのは当たり前、それに何をプラスして自分の強みを作り上げるかというのが彼らが働く上での一種の戦略なのだろう。

自己研鑽の時間が終われば夜の街に繰り出し、カフェやバーでストレス発散するのも忘れない。

ベトナム人の生き方をみると、私たち日本人が忘れかけている「勤勉」の心を思い出させてくれ、自分も頑張らなければ、と発奮させられる。

めちゃくちゃ気軽にジョブホップ

副業、自己研鑽を経てたどり着く先は、転職なのも確かである。終身雇用、年功序列といった雇用慣行が長く続いてきた日本では、転職にマイナスのイメージを抱く人も少なくはない。しかしここベトナムでは、転職は消してマイナスなものではなく、「より自分の強みを生かせる場所を探すためのもの」であり、彼らはみな、潜在的なジョブホッパーなのである。副業が本業を上回れば事業を拡大させ会社を興すし、自己研鑽の結果さらなる好条件の職を探すため退職することは非常によくある話である。自分より若い子がマネージャーとなり年上のスタッフを指導することも当たり前で、自分の能力に対して望む給与が得られない場合はサクッと退職をしていく。この習慣が日系企業の古い雇用システムでは対応しきれず、日系企業では有能なベトナム人材の確保をするのが難しくなってきている。

ちなみに、採用後の試用期間中に退職するのもかなりよくある話で、入社初日で退職を決める試用期間スタッフを何人も見てきた。ちなみに私の知る限りでの退職最短記録は入社後2時間である。これにはさすがのベトナム人スタッフも驚いていた。

働く女性の味方、家政婦さん

ベトナムでは女性の管理職の割合が日本より断然高い。ベトナム人は割と若くして結婚、出産をするので、社内の女性管理職は皆お母さん、ということもある。ベトナムの産休制度は出産前後半年と決まっていて、産後すぐ職場復帰する女性も少なくない。多くの場合子供を同居家族に預けて復帰するそうだが、そうはいかない家庭も当然ある。そんなときの強い味方が、家政婦さんの存在である。子供の世話、家事等のために家政婦さんを雇うことはベトナムでは珍しくない話で、中には住み込みの家政婦さんを雇っている家庭もある。家政婦さん探しは通常、知り合いの紹介によることが多く、そうすることでトラブルを未然に防ぐらしい。赤ちゃんの頃から家政婦さんのお世話になっているという管理職の女性は、「最初は他人を家に入れることに抵抗があったが、長年の信頼関係のおかげで今では自分の家族同然の存在となり、自分も仕事に集中できるので本当に助かっている」と語っていた。日本ではまだまだ育児が母親の仕事というイメージが根強く、母親の職場復帰には多くの壁が立ちはだかっており、産後頭を悩ませる問題の一つであるが、こんな風に育児を任せられる存在がいてくれれば心強いだろうと想像する。どう育てたって愛情に変わりはないでしょう、と自信たっぷりに話すお母さん管理職の自信にあふれた笑顔が、ベトナムのさらなる成長を保証してくれるようであった。

この記事を書いた人

Nakajima Maho

およそ4年前にベトナムに渡り、日本語教師の経験を積みました。そこでの経験から独学でベトナム語を学び、帰国後、通訳・翻訳として技能実習生ほはじめとする在日ベトナム人の生活を支援しました。現在はホーチミン市の某メーカーにて勤務し、ベトナム人スタッフと日々奮闘しています。

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