特定技能外国人を雇用する場合には、最低賃金法に基づいて給料を支払う必要があります。
とかくトラブルになりやすい賃金体系については、契約前に労働条件や職務内容を踏まえて外国人にわかりやすい説明があると良いでしょう。
外国人の理解不足で、後からのクレームや不安材料にならないように透明性のある雇用関係を築きましょう。
また、外国人側が不利になるような低賃金設定は、法律上無効となり、罰金や特定技能外国人受け入れの事業の停止も免れません。正当な労働条件をもとにお互いに交渉できる時間を設け、納得のいく契約と風通しの良い職場環境を目指しましょう。

最低賃金とは?

労働者(日本人、外国人いずれも)に対して賃金の最低額を保障したもの。
最低賃金には『地域別最低賃金』と『産業別最低賃金』があり、2つのうち高い賃金の方を選んで支払います。最低賃金に関しては毎年10月に更新されますので、外国人雇用の際は、随時チェックは忘れずにしましょう。

例)『地域別最低賃金』が900円で『特定(産業別)最低賃金』が920円だった場合、賃金額は920円ということになります。
・『地域別最低賃金』
(各都道府県で働く全ての労働者とその会社(使用者)に対して適用される最低賃金)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/

・『特定(産業別)最低賃金』
(特定の産業について設定されている最低賃金)
https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/kijunkyoku/minimum/minimum-19.htm

最低賃金以下で雇用した場合の措置について

特定技能外国人と受け入れ側が同意のもと、最低賃金より低い金額で契約した場合は、その契約は認められず、改めて最低賃金に基づいて差額の支払いが発生します。

※最低賃金違反の罰則は以下の通りとなります。

・既定の最低賃金と誤った金額との差額を支払う
・50万円以下の罰金を支払う(地域別最低賃金の場合)
・30万円以下の罰金を支払う(特定(産業別)最低賃金の場合)
https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/kijunkyoku/minimum/minimum-10.htm
厚生労働省の最低賃金制度とは↑

割り増し賃金について

企業の人手不足解消の手段として、長時間労働や時間外労働が半ば強制的に行われているケースもあります。こういった労働条件のトラブル回避のために、割り増し賃金の適用があります。
労働条件に記載されている勤務時間以外や休日出勤をした場合などが対象となります。
時間外労働がうやむやにならないために、雇用側は社員の労働管理を徹底し、適正な賃金を支払うことが求められます。

・時間外労働 25%以上
・深夜業務 (午後10時~午前5時まで)25%以上
・休日出勤 35%以上
・1か月60時間以上の時間外労働 50%以上

在留外国人の給料相場、日本人の給料との比較

厚生労働省発表の令和2年 『賃金構造基本統計調査結果の概況』によりますと、在留資格別と日本人新卒学歴別の集計が以下の通りとなっています。

在留資格      賃金        年齢     勤続年数
・外国人労働者     218,100       33.3      2.7
・専門的・技術的分野  302,200       31.8      2.9
・特定技能       174,600       28.1      1.1
・身分に基づくもの   257,000       44.4      4.3
・技能実習       161,700       27.1      1.7
・留学生(資格外活動)  -         -       -
・その他        205,300       32.2      2.8

(特定活動及び留学以外の資格外活動)
※専門的・技術的分野→ 高度な専門的な職業、大卒ホワイトカラー、技術者、
            外国人特有または特殊な能力等を活かした職業など
※身分に基づくもの→ 定住者(おもに日系人)、永住者、日本人の配偶者など
※特定活動→ 技能実習、EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士候補者、
       外交官等に雇用される家事使用人、ワーキングホリデーなど

      大学卒   高校卒
男女別   226,000  177,700
男     227,200  179,500
女     224,600  174,600

在留資格、特定技能外国人の給料は174,600円、対象年齢は約28才。ここに、特定技能外国人の学歴や技術的な能力による査定がどこまで反映しているか定かではありませんが、日本人の大学卒または高校卒と比較して低い給料である印象を受けます。

ただし、日本人と特定技能外国人を比較する条件が学歴以外にも「同一労働同一賃金」に基づく賃金であるかも定かでないため、一概に特定技能外国人の賃金が低いという事実にはつながりません。

「同一労働同一賃金」とは、職務内容が同じであれば、同額の賃金を従業員(外国人も含む)に支払うという制度です。

いずれにしても、特定技能外国人の給料は、最低賃金法に基づき、更に「同一労働同一賃金」であることが重要であり、法令にそって支払うことが求められています。

(上記の公表されている数値に関しては、新型コロナウイルス感染症の影響により、例年と比らべて要件を満たす労働者が減少していることもあり、参考の際はご留意ください。)

給与控除について

特定技能外国人が給与明細を見て、思ったより少ないと思うケースがよくあります。総支給額より手取り額に対してのクレームには、契約前のオリエンテーション時に、給料の仕組みについて徹底してレクチャーしておきましょう。

※特定技能外国人の給与から控除されるもの。
・雇用保険
・厚生年金
・源泉所得税
・住民税
・介護保険

特定技能外国人を受け入れの際は、法律上、日本人と同様に労働基準法にそって定められた規定が適用されます。給与査定については、最低賃金法に基づいた金額をもとに取り決めましょう。

問題となる日本語の労働条件の理解力については、各企業ごとに外国人専用にマニュアル化した説明方法などを作成し、母国語を交えた説明をすることが大切です。

世の中に起こっている外国人労働者とのトラブルの中には、些細なミスマッチから大きく発展してしまった場合もあります。賃金に関しては特に明確なルールを作って適正な雇用と信頼関係を築いていきましょう。

この記事を書いた人

shyu

海外在住ライター/ネパール国籍の配偶者と日本国籍の息子と日本人の私の3人家族。カトマンズに12年暮らす。 海外に住むということは、国籍はもちろん生まれも育ちも違う者どうしが、なんらかの関係性を保ちながら生きる修行をしているようなもの。 今後、日本で暮らし働く外国人が増えて行くことが予想される中、その動向を外国人の心情に寄り添った視点で発信していきたい。

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