ベトナムは、麺料理、鍋、BBQ、大皿料理など、あらゆる料理に肉や魚をたっぷり使います。しかしながら、宗教上の理由からヴィーガンとなる人も少なからずいます。その度合いは様々で、完全に肉を断つ人もいれば、定められた期日のみ肉を断つ人もいます。また、ベトナムの環境汚染による健康被害を心配してベジタリアンになるケースもあります。

ベトナムの僧侶はベジタリアン

ベトナムは歴史的に中国の影響を色濃く受けているため、主流の宗教は仏教。なかでも大乗仏教が多数を占めています。

ベトナム人にとって仏教は身近な宗教

ベトナム人にとってお寺や僧侶はとても身近な存在です。旧正月にあたるテトの期間になると、仏教のしきたりに従ってお寺に参拝したり、お坊さんにお布施をしたりします。ベトナムの街中を歩くと、黄金色の袈裟をまとったお坊さんとよく出会います。田舎に行くと、お寺の広大な敷地で修業をしているお坊さんが多数歩いています。

お坊さんは原則ベジタリアン

このようなお寺でお勤めしているお坊さんは基本的にベジタリアンです。肉、魚、卵のような食べ物はもちろん、ダシなどの粉末に含まれている動物性の成分を口にすることも許されていません。お坊さんは、スーパーなどで普通に買い物をしていますが、動物性の成分が入ってしないか念入りにチェックしています。少しでも気になる点があったら、口にするのを控えます。

ベトナム人のヴィーガンの度合いは様々

一般のベトナム人も、宗教的な理由や家に伝わる慣習から、動物性の食べ物を避けることがあります。

完全なヴィーガンは田舎に住む年配者が中心

肉や魚を完全に断つヴィーガンは少なからずいますが、田舎に住んでいる年配者が中心です。家族みんながヴィーガンということもあれば、「おじいちゃん」「おばあちゃん」のみということもあります。そういう人たちはとても信心深く、参拝やお布施も欠かさず行っています。街中に近づくほど厳格なヴィーガンに出会う確率は減少していきます。

ベトナムは月に2回、菜食の日がある

ただし、太陰暦で新月と満月の日(1日と15日)は菜食の日とされているため、月に2回のみ肉魚を断つベトナム人は珍しくありません。1日と15日になると、ベトナム人は外出を控えるため、商業施設はいつもよりも静かになります。スーパーでは、日ごろから試食が頻繁に行われていますが、この2日間に限っては実施が見送られます。

ヴィーガンレストランの料理も充実

ベトナムでは、菜食主義が浸透しているため、ヴィーガン専門のレストランが数多く存在しており、日本人でも気軽に食べられます。

ボリューム満点のベトナムのヴィーガン料理

ヴィーガン料理とは、日本で言うと「精進料理」。お坊さんが食べる質素な料理というイメージがありますが、ベトナムのヴィーガン料理は意外にもボリューム満点。肉に似せた豆腐料理、野菜を巧みに使った春巻き、炒飯、麺などが食べられます。ビュッフェスタイルでお腹いっぱい食べられるヴィーガン料理のレストランもあります。

健康への配慮からヴィーガンになることも

ベトナム人のなかには、そこまで信心深くないものの、健康に対する配慮からヴィーガンとなるケースも増えています。ベトナムでは、炎天下のなかハエがたかる肉が売られているのは日常茶飯事。工場排水で汚染された川で獲られた魚が市場に出回り問題となっています。そこで、ベトナムで売られている肉や魚に対する不信感から、ヴィーガンになることもあります。

ベトナムはベジタリアンを尊重する文化がある

ベトナムでは、すべてのベトナム人が厳格なヴィーガンではありませんが、ヴィーガンを尊重する文化があります。

1日と15日の会食は要確認

ベトナムでは、完全なヴィーガンと出会う機会は多くありません。しかし、月に二回のベジタリアンは比較的多いという現状があります。また、自身はそうではなくても、他人がヴィーガンであることを尊重する文化が根付いています。1日と15日は、家族以外の誰かに食事をごちそうしたり、会社で飲み会を企画したりすることは避ける傾向があります。そのため、食事会や飲み会を開催するときは、念のため確認しておいたほうがいいでしょう。

ホーチミンはとくにヴィーガンの伝統が色濃い

ヴィーガンは、田舎の年配者に多い傾向がありますが、地域で言うとハノイよりもホーチミンのほうが色濃いです。ホーチミンの北西にあるタイニン省に、ベトナムの新興宗教であるカオダイ教の拠点があることが、その理由のひとつです。カオダイ教とは、世界の宗教をミックスさせた何でもありの宗教。ただし、食事については、仏教の戒律に従って、肉を食べずに菜食を徹底することが義務づけられています。

まとめ

ベトナム人は、基本的に肉や魚が大好きですが、伝統や風習を重んじる人も多いため、月に2回もしくはそれ以上、菜食の日を設けることがあります。日本で暮らしている場合、とくにダシなどに動物性の成分が入っているため、ヴィーガンを徹底することは困難。そこで、会社等でヴィーガンのベトナム人を迎え入れることになったら、菜食の日に利用できる食材を事前に指定してあげるといいでしょう。

この記事を書いた人

ひこすけ

大学にて10年間勤務したのち、ベトナム現地企業にて、地方中小企業の販路拡大支援に従事する。大学では留学生、ベトナムでは現地スタッフ指導経験あり。日本語教育にも関わっていました。現在はライターとして活動中。

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