ベトナムの食堂に入ると、必ずと言っていいほど、入り口に「商売の神様」に向けたお供えものが飾られています。また、旧正月のテト前になると、自宅の「かまどの神様」にお供えする食物の準備にいそしむのがベトナムの伝統。ベトナムは、中国の民間信仰である道教の影響を受けていることもあり、縁起やタブーを重視する国民性があります。そこで、ベトナムではどんなものが縁起物とされるのか、タブーと合わせてご紹介します。

ベトナムの縁起物①:黄色と赤の組み合わせ

ベトナム人は、とくに旧正月のプレゼントや飾り物、食べ物を選ぶとき、縁起のいい色を意識して選ぶ傾向があります。

テトの時期は黄色と赤の飾り物でいっぱいに

テトの時期になると、商店ではテト用の飾り物が所せましと並べられます。飾り物の色は決まっており、ほとんどが黄色(あるいはゴールド)と赤の組み合わせです。ひときわ目立つのが黄色い花の飾り物。「梅の花」と呼ばれていますが、実際の花名はホアマイという梅とはまったく異なる花です。本来は、梅の花や桃の花が縁起物とされていますが、シーズン的に入手が難しいため、代わりにホアマイを飾ることが習慣化しています。

プレゼントは縁起物カラーが好まれる

テトでは、お世話になった人たちにプレゼントを渡す習慣があるのですが、このときも縁起のよい色が重視されます。たとえば、日本酒はテトの贈り物として人気がありますが、黒やシルバーをベースとするスタイリッシュなパッケージは、縁起がよくないと敬遠されます。パッケージが縁起色であるというだけで、馴染みの薄い日本の商品を買っていくベトナム人もいます。日本人からすると、「ケバい」「金ぴか」と表現されるようなド派手なパッケージに人気が集まります。

ベトナムの縁起物②:数字は絶対NGのタブーも

ラッキーカラーはテトのときにとりわけ重視されますが、ベトナム人が日常的に縁起をかつぐのが数字です。

ベトナムで縁起のいい数字は9と8

ベトナム人がもっとも縁起のいい数字と見なすのが9です。バイクや車のナンバーの数字は、合計が9になると縁起物。電話番号や宝くじも同じような基準で選ばれる傾向があります。9が縁起物とされるのは中国の影響によると言われています。中国の漢越語では9を「クー」と発音するのですが、永遠を意味する「クー」と同じ発音。そこから9は永遠の幸福をもたらす数字と見なされています。また、商売人は、繁盛を想起させる発音の8をラッキーナンバーとしています。

ベトナムタブーの数字は3と7

ベトナムでタブーとされる数字は3。不吉なことを暗示するとされ、3が付く日に外出を避ける、3人で並んで写真を撮ることを嫌がるベトナム人もいます。また、12階をAとBの2フロアつくり13階という表示を避けることもあります。日本ではラッキーナンバーとされる7もタブーの数字。7はベトナム語で「タッ」と発音するのですが、失敗を意味する「タッバイ」を連想させることがその理由です。ベトナムの有名ビールの「333」は、一見すると縁起が悪く思われますが、合計する9になるため幸運を呼ぶとされています。

ベトナムの縁起物③:5種の果物

ベトナムでは、さまざまな種類の果物が食べられていますが、縁起がいいとされる果物が5種あります。

お供え用の大皿は縁起物の集大成

旧正月、「かまどの神様」にお供えする果物は、マム・グー・クアと呼ばれる大皿に盛られます。マムはお盆、グーは数字の5、クアは果物を意味します。ラッキーナンバーは9や8と紹介しましたが、昔は5が縁起のよい数字でした。5種の果物は、黒=水、赤=火、青=木、白=金、黄色=土の5色で構成するのが決まり。赤はスイカやドラゴンフルーツ、青は完熟前のバナナやパパイヤ、白は梨、黄色はザボンやオレンジ、黒はマンゴスチンやチョムチョムなどが該当します。

仏の姿を想起させる果物も

ベトナムは仏教国。そのため、仏の姿を想起させる果物を積極的にお供えします。そのひとつがファッ・トゥー(仏手柑)。花にもカボチャにもバナナにも見える不思議な柑橘系の果物です。柑橘系ではありますがほとんどが皮。それをお湯でじっくり茹でて食べます。もうひとつがシャカトウ(釈迦頭)。日本ではカスタードアップルという呼び名でも知られています。白い果肉はとても甘く、ほのかな酸味も感じられます。名前通り、お釈迦様の頭を連想させる見た目から、縁起のよい果物とされています。どちらも露店などで気軽に購入できます。

まとめ

タブーを避けるために、風水の教えに基づいて部屋をレイアウトする、信仰上の理由から肉を食べないベトナム人もいます。ベトナムでは、それは特別なことではなく、普通のこととして受け入れられています。そこで、縁起やタブーを気にして行動することがあったら、できるだけ尊重してあげることがベトナム人といい関係を築くうえで大切になるでしょう。

この記事を書いた人

ひこすけ

大学にて10年間勤務したのち、ベトナム現地企業にて、地方中小企業の販路拡大支援に従事する。大学では留学生、ベトナムでは現地スタッフ指導経験あり。日本語教育にも関わっていました。現在はライターとして活動中。

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