職場のベトナム人スタッフに、感謝の気持ちを込めてプレゼントを渡したことはあるでしょうか。良かれと思って選んだギフトが、実は相手の文化では「縁起が悪い」とされるものだったというケースは意外と少なくありません。ベトナムには日本にはない独自の贈り物タブーが数多く存在し、知らずに渡してしまうと相手を困惑させてしまうこともあります。そこで、ベトナム人へのプレゼントで避けるべきタブーと、本当に喜ばれるおすすめギフトについてご紹介します。

ベトナム人へのプレゼントのタブー①:贈ると失礼になるNGアイテム

ベトナムの贈り物文化には長い歴史があり、言葉の響きや風水の考え方がプレゼント選びにも深く影響しています。まずは、贈ること自体がタブーとされる代表的なアイテムを見ていきましょう。

ハンカチ・靴・傘は「別れ」を意味する

日本ではハンカチ・靴・傘はいずれも実用的で喜ばれるプレゼントの定番ですが、ベトナムでは最も典型的な贈り物のタブーとされています。ハンカチはベトナム語で「khăn」と言い、「困難」と同じ音を持つことから縁起が悪いとされてきました。ベトナムにはことわざ「Khăn chia áo lìa(ハンカチで別れ、服で離れる)」があり、ハンカチは別離の象徴として広く認識されていることも覚えておくとよいでしょう。

靴もまた避けるべきアイテムの一つです。ベトナム語で靴を意味する「hài」は「ため息・嘆き」に似た発音を持ち、相手を自分から遠ざけてしまう象徴と言われています。一方、傘(ô dù)は「分かれる・散る」と近い発音であることから、やはり贈り物にはふさわしくないとされています。日本人にとっては意外かもしれませんが、この3つはベトナムで最も避けるべき贈り物と考えていいでしょう。

刃物・時計・ろうそくは縁起が悪い

ナイフやはさみなどの刃物は、風水の考え方で「関係を切る」ことを象徴するため、贈り物としてはタブーです。時計は「老い」や「死」を連想させるもので、これは中国文化圏と共通する考え方と言われています。また、白いろうそくはベトナムでは葬儀の際に使われるものであるため、プレゼントとして贈ると非常に失礼にあたります。

ベトナムでは多くの人が特定の組織的宗教に属していないとされていますが、民間信仰や風水の影響は日常生活に根強く残っています。そのため、宗教に関係なくこうしたタブーは広く共有されていると思っておいたほうがいいでしょう。

マグカップや手袋は「別れ」を連想させる

意外に思われるかもしれませんが、マグカップも注意が必要なアイテムです。壊れやすいマグカップは「愛のもろさ」を象徴するとされ、さらにベトナム語でコップを意味する「ly」が「chia ly(別離)」を連想させることも理由の一つです。また、手袋は「愛の終わり」を暗示すると言われており、特に異性への贈り物としては避けられる傾向があります。これらのアイテムは恋愛的な文脈に限らず、職場のギフトシーンでも意識しておくことが大切です。

赤やピンクの暖色系で包装されたギフトボックス

ベトナム人へのプレゼントのタブー②:包装・数字・渡し方のNG

贈り物の中身だけでなく、包装の色や数字、渡し方にもベトナム独自のマナーがあります。せっかく良いプレゼントを選んでも、渡し方を間違えると台無しになってしまうこともあるため、あわせて確認しておくと安心です。

黒と白の包装紙は葬儀を連想させる

ベトナムでは黒と白の組み合わせは弔事の色とされており、プレゼントの包装紙にこの2色を使うのは避けたほうがいいでしょう。贈り物を包む際は、赤・黄色・ピンクなどの暖色系を選ぶのがおすすめです。赤は幸運、黄色は繁栄を象徴し、ベトナムでは吉兆の色として広く好まれています。ベトナム人の色の好みについてさらに詳しく知りたい方は、「 ベトナム人の好きな色は?男女別に解説 」の記事も参考にしてみてください。

数字の「4」と「13」は不吉とされる

日本でも「4」は「死」を連想させる数字として避けられることがありますが、ベトナムでも同様です。ベトナム語で4を意味する「tứ」は「死」と同音であり、贈り物の個数として4は縁起が悪いとされていることも覚えておくとよいでしょう。また、13も不吉な数字として認識されているため、セット商品を贈る際は4個入りや13個入りを避けることをおすすめします。

一方、偶数は縁起が良いとされており、特に2・6・8といった数字が好まれる傾向があります。お菓子の詰め合わせなどを贈る場合は、こうした数字を意識して選んであげると喜ばれるでしょう。

両手で渡して、その場では開けないのがマナー

ベトナムでは、贈り物は両手で渡し、受け取る側も両手で受け取るのがマナーとされています。左手だけで渡すのは失礼にあたるからです。また、受け取る側が1〜2回辞退する場面に遭遇するかもしれませんが、これは拒否ではなく謙遜の文化によるものでしょう。そのため、相手が一度断っても、もう一度すすめてみるとよいかもしれません。

さらに、ベトナムではプレゼントをその場で開封せず、後で開けるのが一般的です。日本ではその場で開けて喜びを見せるのがマナーとされることもありますが、控えめに受け取るのがベトナムスタイルです。この違いを知っておくだけで、相手の反応に戸惑うこともなくなるでしょう。

ベトナム人へのプレゼントのタブー③:シーン別で喜ばれるおすすめギフト

タブーを押さえたところで、次はベトナム人に実際に喜ばれるプレゼントを見ていきましょう。贈る場面によって適切なギフトは異なるため、シーン別に整理してご紹介します。

職場の歓迎会・送別会・誕生日には実用品が正解

職場でベトナム人スタッフに贈り物をする場合、日本製の文房具やスキンケア用品など、高品質な実用品が喜ばれる傾向があります。特に日本のお菓子は鉄板ギフトと言ってよく、抹茶味のキットカットなど日本らしいフレーバーのものは非常に人気があります。

華やかなカラフルな花束

とはいえ、あまりに高価なものを贈るのは逆効果になることもあります。ベトナムの文化では、高額な贈り物は相手に心理的な負担をかけてしまう場合があるため、気持ちが伝わる程度の価格帯にとどめておくほうがいいでしょう。また、食品ギフトを選ぶ際には、ベトナム人が苦手とする食べ物もあるため注意が必要です。詳しくは「 これを出すのはNG!ベトナム人が苦手な日本の食べ物4選 」の記事をご確認ください。

テトや女性の日には花束・果物が定番

ベトナムの旧正月であるテトの時期には、アルコール飲料や生鮮果物を贈るのが一般的です。Statistaの2021年の調査データによると、テト期間のギフトとして最も多く選ばれているのはアルコール飲料で、次いで生鮮果物となっています。

また、ベトナムには10月20日の「ベトナム女性の日」と3月8日の「国際女性デー」という2つの女性の日があり、女性に花束を贈る文化が根付いています。ベトナムでは花束は大きく華やかなものほど喜ばれるとされていますが、菊や黄色い花は葬儀を連想させるため避ける必要があります。女性の日の詳細については「 ベトナム女性の日はどんな記念日?ぴったりのプレゼントは何? 」の記事で詳しく解説しています。

ブランド品・アクセサリーは男女問わず人気

親しい関係のベトナム人に贈る場合、ブランドコスメやアクセサリーは男女問わず喜ばれるアイテムです。特に日本のコスメブランドはベトナムで高い評価を受けており、スキンケア用品は女性への贈り物として人気があります。また、健康食品やサプリメントも、家族を大切にするベトナム人の心に響く贈り物と言えるでしょう。

もう一つ知っておきたいのが、現金を財布に入れて贈るという文化です。ベトナムでは財布のプレゼントは歓迎されますが、空の財布を贈るのはNGとされています。少額でもお金を入れておいてあげると「お金が貯まるように」という願いが伝わるでしょう。

ベトナム人へのプレゼントのタブー④:職場で外国人材に贈るときの実務ポイント

ここからは、企業の人事担当者や管理者の方に向けて、職場でベトナム人スタッフにプレゼントを贈る際の実務的なポイントを解説します。

プレゼントを交換する様子

会社の贈り物と個人の贈り物は明確に分ける

職場でのギフトは、会社として贈る場合と個人として贈る場合を明確に分けることが大切です。会社として贈る場合は、全員に対して公平な品目・価格帯で統一し、特定の人だけが特別扱いされないよう配慮する必要があります。一方、個人として贈る場合は、相手の好みや関係性に合わせて選ぶとより喜ばれるでしょう。

また、ベトナムでは旧暦の1日と15日が宗教的な精進日にあたり、この日に肉類を控える人も少なくありません。食品ギフトを贈るタイミングによっては、肉類を含まないものを選ぶ配慮があると丁寧です。ベトナムの宗教事情について詳しくは「 ベトナムの宗教事情 タブーや生活習慣などを解説 」の記事をご覧ください。

技能実習生には日本ならではの実用品が好評

技能実習生に贈り物をする場合、母国に持ち帰って家族に見せられるようなアイテムが特に好評です。日本らしいパッケージのお菓子や、日本製の文房具・日用品などは、本人だけでなく家族への話題作りにもなるでしょう。ベトナムには「Của ít lòng nhiều(小さな贈り物、大きな心)」ということわざがあり、金額の大きさよりも気持ちが込められているかどうかが重視される傾向があります。

プレゼントにベトナム語の一言メッセージを添えるのも効果的です。たとえば、誕生日であれば「Chúc mừng sinh nhật(誕生日おめでとう)」と手書きのカードを添えてあげると喜ばれるでしょう。流暢なベトナム語である必要はまったくなく、短い一言でも相手の文化を尊重する姿勢が伝わるものです。ベトナム語でのコミュニケーションに興味がある方は「 ベトナム語の特徴とは?コミュニケーションのコツを解説 」の記事も参考にしてみてください。

まとめ

多国籍チームが笑顔でミーティングする様子

ベトナム人へのプレゼントには、ハンカチや靴、傘、刃物、時計など、日本では問題なくても避けるべきアイテムが数多くあります。包装の色や数字、渡し方にも独自のマナーがあるため、事前に知っておくだけでトラブルを防ぐことができるでしょう。迷ったときは、日本のお菓子や華やかな花束を選んでおけば間違いありません。

もちろん、すべてのタブーを完璧に把握する必要はないと思います。大切なのは「相手の文化を知ろうとする姿勢」そのものであり、その配慮はベトナム人スタッフにもきっと伝わるでしょう。ベトナムのことわざ「Của ít lòng nhiều(小さな贈り物、大きな心)」のとおり、心を込めた贈り物は金額に関係なく相手の心に届きます。文化の違いを理解し、尊重し合うことで、職場での信頼関係はより一層深まっていくでしょう。

この記事を書いた人

ヤマシタハヤト