特定技能外国人の転職は制度上認められているのか。採用後に転職されてしまったら企業はどう対応すればいいのか。こうした疑問は、特定技能制度を初めて活用しようとする企業担当者からよく寄せられます。

結論から言えば、特定技能外国人の転職は原則として可能です。ただし、同一分野内という制限があり、転職の際には外国人本人と受入れ企業の双方が所定の手続きを踏む必要があります。本記事では、転職が認められる根拠と条件、具体的な手続きの流れ、採用前に確認すべき事項、そして定着率を高めるための実務的な対策までを解説します。

特定技能の転職が可能な理由:技能実習との決定的な違い

特定技能制度と技能実習制度では、転職(転籍)に関するルールが根本的に異なります。この違いを理解しておくことが、制度を正しく活用する上での前提知識となります。

技能実習制度における転籍の制限

技能実習制度では、実習生は原則として受入れ機関を変更することができません。転籍が認められるのは、実習実施者側の倒産や著しい不正行為、天災など特定のやむを得ない事情に限られます。さらに、転籍には監理団体・送出機関の承認が必要なため、実際には容易ではありませんでした。この転職制限は、実習生が劣悪な環境に置かれた場合でも職場を離れられないという人権上の問題として、長年にわたり指摘されてきた点でもあります。

特定技能制度における転職の自由

これに対して特定技能制度は、「深刻な人手不足の解消」を目的に2019年に創設された在留資格であり、外国人本人にも日本人労働者と同様の転職の自由が保障されています。特定技能外国人は、より良い処遇・職場環境を求めて転職することが制度上認められているのです。

この点は受入れ企業にとってデメリットに映るかもしれませんが、裏を返せば「優秀な人材を確保・定着させるためには、適切な処遇と職場環境が不可欠」という意味でもあります。

在留資格全般の種類・概要については、 在留資格の種類一覧 でも詳しく解説しています。

特定技能1号・2号の転職ルール

同一分野内の転職は原則自由

特定技能1号で就労している外国人は、同一の特定産業分野(業種)内であれば自由に転職できます。たとえば、介護分野の特定技能1号として施設Aに勤める外国人が、別の介護施設Bに転職することは認められます。業種が同じであれば、在留資格の変更手続きは不要です。

2024年時点で、特定技能の対象分野は16分野あります。介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業などが含まれます。各分野ごとに求められる技能水準や技能試験が異なるため、転職は基本的に同一分野内で行われることになります。

特定技能の対象業種・職種の詳細は、 特定技能の対象業種一覧 でご確認いただけます。

異なる分野への転職は在留資格変更許可申請が必要

介護分野から飲食料品製造業へ転職するといった異なる分野間の移動は、在留資格変更許可申請が必要です。転職先の分野で求められる技能試験・日本語試験を満たしていれば申請自体は可能ですが、現在の在留資格の活動範囲外となるため、出入国在留管理庁への申請・許可取得が必須です。許可が下りる前に就労を開始させると不法就労となるため、この点には特に注意が必要です。

通算在留期間の上限に注意

特定技能1号の在留期間は通算5年が上限です(更新は1年・6か月・4か月のいずれか)。転職しても在留期間の上限は延長されず、前職での就労期間も通算されます。在留期間の残存期間が少ない外国人を採用する場合は、採用スケジュールと在留資格の更新時期をあらかじめ確認しておくことが重要です。

特定技能2号の場合は在留期間の通算上限がなく、更新さえ行えば継続就労が可能です。転職のルール自体は1号と同様です。

転職時に必要な手続きの流れ

転職が発生した場合、外国人本人と各企業(転出元・転入先)のそれぞれが所定の手続きを行う必要があります。手続きを怠ると法令違反となる場合があるため、それぞれの義務を正確に理解しておくことが求められます。

外国人本人が行う手続き

就労資格証明書の取得(任意・強く推奨)

就労資格証明書とは、外国人が保有する在留資格において、特定の業務に就くことができると出入国在留管理庁が証明した文書です。取得は義務ではありませんが、転職先企業が適法な雇用であることを確認するために取得を強く推奨します。

企業が就労資格証明書を確認することで「不法就労助長罪」のリスクを回避できます。申請に必要な書類は、申請書・在留カード・雇用予定先の雇用契約書(写し)などです。 出入国在留管理庁の特定技能ページ でも最新の手続き情報を確認できます。

所属機関変更届の提出(転職日から14日以内)

転職が成立した場合、外国人本人は転職日から14日以内に出入国在留管理庁へ「中長期在留者の所属機関変更届」を提出しなければなりません。届出方法は、郵送・窓口持参・オンライン申請(在留申請オンラインシステム)の3種類から選べます。この届出を怠ると、在留資格の更新・変更申請に悪影響を及ぼす可能性があります。

転入先(採用側)企業が行う手続き

特定技能雇用契約の締結

特定技能外国人を雇用するには、法定の記載事項を盛り込んだ特定技能雇用契約を締結する必要があります。報酬は同等業務に従事する日本人と同等以上でなければならず、不当な低賃金での雇用は認められません。

1号特定技能外国人支援計画の新規作成

特定技能1号を受け入れる企業には、10項目の必須支援を盛り込んだ1号特定技能外国人支援計画の策定義務があります。事前ガイダンスの実施、生活オリエンテーション、相談・苦情対応体制の整備、定期面談などが含まれます。自社での実施が困難な場合は、登録支援機関への委託が可能です。

ユアブライトは登録支援機関(登録番号: 19-登-000992)として、支援計画の策定から実施まで一貫してサポートしています。 外国人材事業の詳細はこちら からご確認ください。

出入国在留管理庁への届出(受入れ開始から15日以内)

新たに特定技能外国人を受け入れた企業は、受入れ開始日から15日以内に出入国在留管理庁へ届出を行う義務があります。届出書類には雇用契約書(写し)・支援計画書等が含まれます。雇用開始後は四半期ごとの定期届出も必要であることを忘れないようにしてください。

ハローワークへの外国人雇用状況届出

厚生労働省が定める外国人雇用状況の届出制度 に基づき、外国人を雇用した企業は翌月10日までにハローワーク(公共職業安定所)へ届出を行わなければなりません。雇用保険被保険者の場合は資格取得届に記載し、被保険者でない場合は専用の様式で届け出ます。

外国人採用全体の手続きの流れについては、 外国人を採用する方法・フロー も参考にしてください。

転職先企業が採用前に確認すべきポイント

転職者(特定技能外国人)を採用する際には、以下の点を内定前に必ず確認してください。法令遵守の観点から、事前確認は形式的な義務ではなく不可欠な実務です。

在留カードの有効期限と在留資格の種別

在留カードに記載された在留資格が「特定技能1号」または「特定技能2号」であることを確認します。在留期間の満了日が近い場合は、更新申請のタイミングと採用スケジュールをあらかじめすり合わせる必要があります。

就労が認められた分野との適合性

採用しようとする業務内容が、本人の在留資格で認められた特定産業分野と合致しているかを確認します。分野が異なる場合は在留資格変更許可申請が必要です。許可取得前の就労開始は不法就労にあたるため、必ず許可後に就労を開始させてください。

就労資格証明書の確認と保管

就労資格証明書がある場合はその写しを保管します。ない場合でも、在留カード・許可通知書の写しを取得・保管してください。企業側が適法性を確認した証跡として、万が一の際に重要な役割を果たします。

前職での支援記録の引き継ぎ

前の受入れ企業や登録支援機関が作成した支援記録を可能な範囲で引き継ぐことで、入社後の支援がよりスムーズになります。ただし、個人情報の取り扱いには適切な配慮が必要です。

特定技能外国人の定着率を高めるための5つの対策

転職が制度上認められている以上、定着率の向上は受入れ企業の重要な経営課題です。採用コストの回収・現場の安定稼働のためにも、以下の対策を早期に整備することをお勧めします。

1. 同等以上の処遇と定期昇給の仕組みを整える

特定技能外国人への報酬は、同一業務に従事する日本人と同等以上であることが義務付けられています。この水準を最低ラインとして捉えるのではなく、定期昇給・賞与の仕組みを整えることが優秀な人材の確保と定着につながります。処遇面での不満は転職の主要因の一つです。

2. 特定技能2号や長期就労を見据えたキャリアパスを提示する

特定技能1号は通算5年が在留上限ですが、要件を満たせば特定技能2号への移行も可能です。また、引き続き日本での就労を希望する外国人材にとって、長期的なキャリアのビジョンを企業側が示すことは、入社後の定着意欲を大きく高めます。

3. 生活支援体制を整備する

日本での生活立ち上げには、住居探し・銀行口座開設・携帯電話の契約など、多くのサポートが必要です。登録支援機関と連携して生活支援体制を整えることで、入社直後の不安を軽減し、早期離職のリスクを低下させることができます。

4. 多言語対応の相談窓口を設ける

言葉の壁によるコミュニケーション不全は、職場での孤立感や離職意欲につながります。母国語スタッフによる定期面談や、多言語対応の相談窓口を設けることで、不満や問題を早期に把握・解決できます。ユアブライトでは母国語対応スタッフによるフォローアップ体制を提供しています。

5. 社内全体の異文化理解を促進する

外国人材が安心して働ける職場環境の整備は、受入れ企業全体の取り組みとして推進する必要があります。既存の日本人スタッフへの異文化理解研修の実施や、外国人材が意見を言いやすい組織文化の醸成が、定着率向上の土台となります。

まとめ

特定技能外国人の転職に関する重要ポイントを整理します。

  • 特定技能は同一分野内での転職が原則可能です。技能実習と異なり、転籍の自由が制度上明確に認められています。
  • 異なる分野への転職には在留資格変更許可申請が必要です。許可前の就労開始は不法就労にあたります。
  • 外国人本人は転職日から14日以内に出入国在留管理庁へ所属機関変更届を提出する義務があります。
  • 転入先企業は特定技能雇用契約の締結・支援計画の新規作成・出入国在留管理庁への届出(15日以内)・ハローワーク届出を行う必要があります。
  • 定着率向上には、適切な処遇・キャリアパスの提示・生活支援の充実・多言語対応の相談窓口・異文化理解の推進が有効です。

特定技能外国人の採用・転職対応でお困りの場合は、ぜひ ユアブライトにお気軽にご相談ください 。登録支援機関(19-登-000992)として、採用から入社後の定着支援まで一貫してサポートします。初期費用・運用費用は0円です。電話でのご相談は 03-6908-6143(受付時間: 9:00-18:00)まで。

この記事を書いた人

ヤマシタハヤト

ヤマシタハヤト

ユアブライト株式会社 取締役 / 登録支援機関 実務責任者。特定技能・外国人材採用・登録支援・在留資格実務を専門領域とし、登録支援機関であるユアブライト株式会社の取締役として、外国人材紹介と受入れ支援の実務に関わっています。

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