「特定技能と技能実習、どう違うの?」「自社にはどちらが合っているの?」という疑問は、外国人材の採用を初めて検討する人事・経営担当者から最もよく寄せられる質問のひとつです。どちらも外国人が日本で就労するための枠組みですが、制度の目的・在留期間・転職の可否・受入れコストなど、多くの点で根本的に異なります。

特定技能と技能実習の違いを曖昧なまま制度を選んでしまうと、採用後に「想定していた雇用期間が確保できない」「転職されてしまった」「費用負担が予想を超えた」といったトラブルにつながりかねません。

本記事では、特定技能と技能実習の違いを7つの観点から実務的に整理します。技能実習から特定技能への移行手続き、2024年に成立した育成就労制度への法改正の影響についても詳しく説明しますので、採用制度の選択にあたっての判断材料としてお役立てください。

特定技能と技能実習、それぞれの制度概要

違いを正確に理解するために、まず両制度の成り立ちと目的を確認しておきましょう。

技能実習制度とは

技能実習制度は1993年に創設されました。制度の正式な目的は「技術・技能・知識の途上国への移転による国際貢献」です。日本で習得した技術を帰国後に母国の産業発展へ役立ててもらうことを建前としており、実習生はあくまでも「帰国を前提とした一時的な就労者」として位置づけられています。

実態としては深刻な人手不足を補う労働力として機能してきた面が大きく、低賃金・長時間労働・転職禁止など、外国人材の権利保護の観点から国内外での批判が続いてきた制度です。根拠法は「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」で、2017年に施行されました。

在留期間は「技能実習1号(最長1年)」「技能実習2号(最長2年)」「技能実習3号(最長2年)」の3段階で構成され、通算最長5年です。3号への移行には受入れ機関・監理団体ともに「優良認定」が必要です。

特定技能制度とは

特定技能制度は2019年4月に施行された在留資格です。制度の目的は「特定産業分野における深刻な人手不足の解消」と明示されており、技能実習とは根本的な設計思想が異なります。

特定技能には「1号」と「2号」の2種類があります。特定技能1号は通算5年を上限として就労でき、業種ごとの技能評価試験と日本語試験への合格が条件です。特定技能2号は在留期間の上限がなく、要件を満たす限り更新が可能で、家族の帯同も認められます。

対象業種は創設当初の14分野から拡大を続けており、建設・介護・飲食料品製造業・外食業・農業・漁業・宿泊業・造船・自動車整備など幅広い産業をカバーしています。 特定技能の対象業種の詳細 については別記事に整理していますので、自社の業種が該当するかどうかの確認にあわせてご活用ください。

出入国在留管理庁の 特定技能に関する公式情報 も、申請要件の最終確認に役立ちます。

制度の目的・仕組みの根本的な違い

特定技能と技能実習の最も本質的な違いは「制度の目的」です。この目的の違いが、転職可否・在留期間・家族帯同といったあらゆる制度設計の差を生み出しています。

目的と設計思想の比較

技能実習の設計思想

  • 目的: 途上国への技術・技能・知識の移転による国際貢献
  • 前提: 実習生は日本で技術を習得した後、帰国することが期待される
  • 転職禁止の理由: 受入れ企業が実習生を育てる義務を担うため、他社への移籍は原則不可
  • 家族帯同不可の理由: 帰国を前提とした短期の在留形態であるため

特定技能の設計思想

  • 目的: 国内特定産業分野の深刻な人手不足の解消
  • 前提: 即戦力として日本の労働市場に参加し、中長期的に活躍することを想定
  • 転職可能の理由: 一般の労働市場と同様に、人材が自身のキャリアに応じて職場を選べる設計
  • 2号で家族帯同可能: 長期定着・キャリア形成を視野に入れた制度設計

この対比を踏まえると、「技能実習は育てて帰国させる制度、特定技能は即戦力を安定的に確保する制度」という整理が、実務上もっとも理解しやすいでしょう。

受入れ形態の違い:間接雇用 vs 直接雇用

技能実習では、「監理団体」(事業協同組合など)が実習生の管理・指導・監督を担う間接的な受入れ形態が主流です。受入れ企業は監理団体を通じて実習生を受け入れ、監理団体に対して毎月管理費を支払います。

特定技能では、受入れ企業が外国人材と直接雇用契約を締結することが基本です。「登録支援機関」が在留資格申請の代行や生活支援を担いますが、あくまでもサポート機関であり、雇用主は受入れ企業自身です。この直接雇用という形態が、企業と外国人材のフラットな関係づくりを促し、長期的な信頼関係の構築にもつながります。

在留期間・転職・家族帯同の違い

採用担当者が制度選択に際して最も気にする3つの要素を詳しく整理します。

在留期間の上限

技能実習

  • 技能実習1号:最長1年
  • 技能実習2号:最長2年(入国から通算3年)
  • 技能実習3号:最長2年(入国から通算5年)
  • 3号移行には監理団体・受入れ機関ともに「優良認定」が必須

特定技能1号

  • 通算5年が上限(1回の在留期間は1年・6か月・4か月のいずれか)
  • 5年の上限に達した後は原則として延長不可
  • 技能実習2号を修了して移行した場合でも、1号としての通算在留期間は5年

特定技能2号

  • 在留期間の上限なし(要件を満たす限り更新可能)
  • 対応業種・試験区分が拡大傾向にあり、今後も対象が増える見込み
  • 長期的な定着・キャリア形成が可能

長期的な雇用継続を前提とするならば、特定技能2号への移行が可能な業種・人材をあらかじめ見据えた採用計画を立てることが重要です。

転職・移籍の可否

技能実習では転職は「原則禁止」です。実習計画に基づく技能習得が制度の根幹にあるため、受入れ企業を変えることは原則として認められません。倒産・廃業・重大な人権侵害などのやむを得ない事情が認められた場合のみ、例外的に移籍が許可されます。

特定技能では、同一業種・分野内であれば転職が認められています。例えば飲食料品製造業の特定技能1号として採用した人材が、同業の別企業に転職することは可能です。採用する側にとっては転職リスクへの対策が必要になりますが、裏を返せば適正な賃金・処遇・職場環境の整備が定着率向上への直接的な手段となります。

家族帯同の可否

技能実習では家族の帯同は原則として認められていません。帰国を前提とした短期就労形態であるためです。

特定技能1号も基本的に家族の帯同は認められていません。ただし、配偶者や子が定住者・永住者・日本人の配偶者等といった別の在留資格を持っている場合は別途判断されます。

特定技能2号では「家族滞在」の在留資格による配偶者・子の帯同が認められます。長期的に日本でキャリアを築きたいと考える外国人材にとって、2号取得は大きなモチベーションになります。

在留資格の種類と活動範囲 については別記事で一覧形式で解説していますので、雇用計画に合わせた在留資格の確認にご活用ください。

受入れ費用・日本語要件・試験制度の違い

実際の採用・受入れを進める際に判断を左右するコストと要件を整理します。

受入れにかかる主なコスト

技能実習の場合

監理団体への管理費(月額2万〜6万円程度)が継続的に発生します。加えて、送り出し国の送出し機関への手数料も必要となるため、1人当たりの採用総コストが30万〜80万円以上になるケースも珍しくありません。住居の確保・渡航費・入国前の日本語教育費用なども受入れ企業が負担することが多く、採用初期の費用負担が大きい傾向があります。

特定技能の場合

登録支援機関への支援委託費(月額2万〜5万円程度)が主なランニングコストです。すでに日本国内に在住している人材を採用する場合は、海外の送出し機関への手数料が不要になるため、初期コストを大幅に抑えることが可能です。

ユアブライトの 外国人材事業 では、初期費用・運用費用0円の完全成功報酬型で特定技能人材をご紹介しています。17万人以上の在日外国人材データベースから条件に合った候補者を探すため、海外からの呼び寄せコストが発生しません。登録支援機関(登録番号:19-登-000992)として、在留資格変更申請から入社後の生活支援まで一貫してお手伝いします。

日本語要件の違い

技能実習制度では、法令上の日本語試験要件は設けられていません。入国前に基礎的な日本語学習を実施することが一般的ですが、JLPT等の公式試験への合格は義務づけられておらず、日本語力に大きなばらつきが生じる場合があります。

特定技能1号では、「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」または「日本語能力試験(JLPT)N4以上」のいずれかへの合格が必要です。N4はおおむね「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる」レベルで、業務上の基本的なコミュニケーションが可能な水準として設定されています。介護分野ではさらに「介護日本語評価試験」への合格が追加で求められます。

技能試験の違い

技能実習では、2号・3号へ移行する際に「技能実習評価試験」への合格が必要です。入職時点での試験は不要で、受入れ企業が実習期間を通じて技能を習得させることが制度上の前提です。

特定技能では、入職前の段階で業種ごとの「特定技能評価試験」への合格が必要です。ただし、技能実習2号を良好に修了した人材は、同一業種・職種に対応する特定技能1号に移行する際に技能評価試験および日本語試験が免除されます。この試験免除制度が、技能実習から特定技能へのスムーズな移行を後押ししています。

技能実習から特定技能への移行手続き

技能実習2号を修了した人材が特定技能1号に移行するケースは、受入れ企業にとって最も現実的な活用経路のひとつです。試験免除のメリットを活かしながら、人材の長期雇用につなげることができます。

移行の基本条件

技能実習から特定技能への移行を進めるにあたって、まず確認すべき条件は以下のとおりです。

  • 技能実習2号を「良好に修了」していること(技能実習法に基づく技能実習計画を満了し、技能実習評価試験に合格していること)
  • 移行先の特定技能の分野・業務が、修了した技能実習の職種・作業と対応関係にあること
  • 受入れ企業が特定技能の受入れ基準(社会保険への適正加入・適正な賃金水準など)を満たしていること

良好修了が認められると、特定技能1号への技能評価試験および日本語試験の免除が適用されます。通常の特定技能申請では試験合格が必須であることを考えると、技能実習修了者の移行は企業にとっても人材にとっても大きなメリットがあります。

移行手続きの流れ

  1. 技能実習2号の良好修了確認: 修了証明書・技能実習評価試験合格証の取得
  2. 移行先企業・雇用条件の確定: 同一企業での継続雇用または転職先の決定
  3. 支援計画の策定: 登録支援機関(または受入れ企業自身)が外国人支援計画を作成
  4. 在留資格変更許可申請の提出: 出入国在留管理庁に申請(審査期間は通常1〜3か月)
  5. 特定技能1号としての就労開始

同一企業で継続雇用する場合でも在留資格の変更申請は必須です。申請に必要な書類には雇用契約書・支援計画書・技能実習の修了を証明する書類などが含まれます。 外国人採用の全体的なプロセス については別記事でも詳しく解説していますので、手続きの全体像を把握する際にあわせてご覧ください。

技能実習制度の詳細については、厚生労働省の 技能実習制度に関する公式ページ で最新情報を確認することをお勧めします。

移行時の主な注意点

  • 技能実習3号修了者も特定技能1号への移行が可能ですが、在留期間が残っているうちに申請を完了させる必要があります
  • 技能実習時の職種・作業と、移行先の特定技能の分野が対応関係にない場合は試験免除が受けられません
  • 転職を伴う移行の場合、元の受入れ企業との雇用関係を適切に終了させる手続きが別途必要です
  • 企業側に社会保険未加入・賃金不払いなどの問題があると、申請が不受理となる可能性があります
  • 申請から許可まで通常1〜3か月かかるため、技能実習の修了時期から逆算して早めに準備を始めることが重要です

技能実習制度廃止と育成就労制度への移行

外国人材受入れ制度をめぐる最大の変化として、2024年6月に技能実習制度の廃止と「育成就労制度」の創設を柱とする法改正が成立しました。採用計画を中長期で考える企業担当者は、この動向を正確に把握しておく必要があります。

育成就労制度の概要

育成就労制度は技能実習制度に代わる新たな枠組みとして創設されます。「国際貢献」を名目にしていた技能実習とは異なり、育成就労は「人材の育成・確保」を正面から目的に掲げており、特定技能制度との一体的な設計が特徴です。

主な制度の特徴は以下のとおりです。

  • 在留期間: 原則3年(特定技能1号への移行を目標とした育成期間として位置づけ)
  • 転籍の可否: 一定の条件(同一業種内、就労開始から1年経過後など)を満たせば転籍が可能(技能実習の最大の批判点を改善)
  • 監督体制: 従来の監理団体は「監理支援機関」として再編・厳格化
  • 施行時期: 2027年頃を目途に段階的に移行。現在(2026年5月時点)は経過措置の整備中

育成就労は「特定技能1号へつなぐ前段階の制度」として設計されており、育成就労修了者が特定技能1号へスムーズに移行できることを前提としています。特定技能制度との連続性が高い点が、従来の技能実習との大きな違いです。

企業が今から準備すべきこと

2027年の施行に向けて、現在技能実習生を受け入れている企業には今から着手すべき課題があります。

  • 在籍中の技能実習生が特定技能1号へ移行できるよう、技能実習2号の良好修了を計画的に支援する
  • 特定技能の受入れ体制(登録支援機関との契約、支援計画の整備、社会保険の適正管理)を整備する
  • 育成就労の詳細要件が確定次第、受入れ規程・雇用契約書の内容を見直す

制度変更の情報収集と実務対応を並行して進めるためにも、登録支援機関や専門家と連携しながら準備を進めることが効果的です。

まとめ:自社に合った制度を選ぶために

特定技能と技能実習の主な違いを7つの観点で整理すると、以下のとおりです。

  • 制度の目的: 技能実習は「国際貢献・技術移転」、特定技能は「人手不足の解消」
  • 受入れ形態: 技能実習は監理団体を介した間接雇用、特定技能は企業との直接雇用が基本
  • 在留期間: 技能実習は最長5年(3段階)、特定技能1号は通算5年、2号は上限なし
  • 転職の可否: 技能実習は原則禁止、特定技能は同一業種内で転職可能
  • 家族帯同: 技能実習・特定技能1号は原則不可、特定技能2号は可能
  • 日本語要件: 技能実習は法定要件なし、特定技能はJFT-BasicまたはJLPT N4以上が必須
  • 今後の動向: 技能実習は廃止・育成就労制度へ移行予定(2027年頃)、特定技能は対象拡大を継続

即戦力として長期雇用したい場合は特定技能が適しています。技能実習2号修了者がいる場合は、試験免除制度を活用して特定技能1号へ移行させることで、雇用の継続性を保ちながらコストを抑えることができます。

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この記事を書いた人

ヤマシタハヤト

ヤマシタハヤト

ユアブライト株式会社 取締役 / 登録支援機関 実務責任者。特定技能・外国人材採用・登録支援・在留資格実務を専門領域とし、登録支援機関であるユアブライト株式会社の取締役として、外国人材紹介と受入れ支援の実務に関わっています。

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