外国人採用には、在留資格の確認から社会保険の適用・行政届出まで、日本人採用にはない注意点が数多くあります。「在留資格の何を確認すればいいかわからない」「特定技能の手続きが複雑でどこから始めればいいか」といった声を、採用担当者からよく聞きます。

見落としや手続き漏れは、不法就労助長罪の刑事リスクや出入国在留管理庁からの行政処分に直結する場合があります。本記事では、初めて外国人材を採用する企業の人事・経営層が実務で即使える注意点を、在留資格確認・労務管理・行政届出・失敗パターンの回避という順序で整理します。記事末尾には採用前後で使える実務チェックリストも掲載しています。

なお、採用全体の手続きフローについては 外国人採用の流れ でステップごとに解説していますので、本記事と合わせてご参照ください。

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在留資格の確認|採用前に必ず実施すべき3つのステップ

外国人採用で最初に確認すべきことは、候補者が就労可能な在留資格を持っているかどうかです。在留資格は現在29種類(2026年時点)あり、就労できる活動範囲はそれぞれ異なります。 在留資格の種類一覧 で各資格の活動範囲と在留期間を確認しておくと、書類選考の段階から判断がスムーズになります。

ステップ1:在留カードの原本提示を求め、4項目を確認する

採用面接・書類選考の段階で在留カード(Residence Card)の原本提示を求めます。確認すべき項目は以下のとおりです。

  • 在留資格の種類(例:特定技能1号、技術・人文知識・国際業務、留学など)
  • 在留期限(カード右上に記載。期限切れでないことを確認)
  • 就労制限の有無(カード中段の欄。「就労不可」と記載された資格は原則として就労できない)
  • 資格外活動許可の有無(留学生の場合、許可があれば週28時間以内の就労が可能)

在留カードが本物かどうかは、 出入国在留管理庁が提供する在留カード等番号失効情報照会システム でカード番号を入力するとオンラインで確認できます。

ステップ2:雇用予定ポジションと在留資格の活動範囲が合致するか確認する

在留資格には活動範囲の制限があります。「技術・人文知識・国際業務」の資格は専門的業務に限定されており、製造ラインや単純作業には原則として使えません。特定技能の場合は対象業種・職種がさらに限定されているため、自社の業種が受入れ対象かどうかの確認も必要です。

ステップ3:不法就労助長リスクを正しく理解する

万が一、就労できない在留資格を持つ外国人を雇用した場合、「知らなかった」は免責理由になりません。入管法第73条の2により、不法就労を助長した事業主には3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります。善意の不知も免責されないため、採用フローの中に在留資格確認を必須ステップとして組み込んでおく必要があります。

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労働条件・社会保険|国籍を理由とした差別は法律上禁止されている

外国人材に対しても、日本人と同様に労働基準法・最低賃金法・社会保険関連法が適用されます。「外国人だから賃金を低く設定していい」「社会保険に加入させなくていい」という認識は法令違反です。

労働条件通知書は書面で交付し、多言語対応が望ましい

労働基準法第15条により、雇用契約締結時には賃金・労働時間・休日・業務内容などを書面で明示する義務があります。外国人材に対しては、本人が内容を十分に理解できるよう母国語または英語での通知書を準備することが推奨されます。 厚生労働省の外国人雇用に関する情報ページ では多言語の労働条件通知書のひな形が公開されており、活用できます。

内容を理解しないまま署名させると、後に「説明を受けていなかった」とのトラブルに発展することがあります。面接・入社前説明の段階でも通訳を介した丁寧な説明を心がけてください。

社会保険・雇用保険の適用条件

外国人材であっても、週30時間以上(または所定労働時間の4分の3以上)勤務する場合は健康保険・厚生年金への加入が義務となります。また、週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある場合は雇用保険の被保険者となります。

特定技能人材はほかの在留資格と同様の社会保険適用ルールが適用されます。パートタイム採用の場合は週の所定労働時間を確認のうえ、適用要件を満たすかどうかを事前に判断してください。

最低賃金は都道府県別に適用される

外国人材も日本の最低賃金法の適用を受けます。地域別最低賃金は都道府県ごとに異なり、毎年10月前後に改定されます。事業所所在地の最低賃金を厚生労働省のサイトで確認のうえ賃金を設定してください。国籍を問わず、最低賃金を下回る賃金の支払いは違法です。

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ハローワークへの外国人雇用状況届出|見落としやすい法定義務

外国人を雇用・離職させた際には、ハローワーク(公共職業安定所)への届出が労働施策総合推進法第28条により義務付けられています。この届出を忘れている企業が少なくありません。

届出の対象は、日本に住所を持つすべての外国人労働者(特別永住者・外交・公用在留者を除く)です。届出のタイミングは雇入れ・離職のいずれも翌月10日までで、届出内容には氏名・在留資格・在留期限・国籍・生年月日・性別などが含まれます。

届出を怠った場合や虚偽の届出をした場合は、30万円以下の罰金が科されます(同法第40条)。外国人材を採用するたびに届出が必要なため、採用完了フローにハローワーク届出を組み込み、担当者が迷わず実行できる体制を作っておくことが重要です。

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特定技能人材を採用する場合に必要な追加手続き

特定技能の在留資格を持つ外国人を採用する場合、通常の採用手続きに加えていくつかの対応が必要です。特定技能制度の対象業種については 特定技能の14業種・職種一覧 で確認できます。

1号特定技能外国人支援計画の策定と実施

特定技能1号の外国人を雇用する受入れ企業は、「1号特定技能外国人支援計画」を策定し、計画通りに実施する義務があります。支援計画に含まれる主な項目は以下のとおりです。

  • 事前ガイダンス(入国前の生活・就労に関する情報提供)
  • 出入国時の送迎
  • 住居確保・生活に必要な契約の支援
  • 生活オリエンテーションの実施
  • 日本語習得の機会の提供
  • 相談・苦情対応(母国語対応が望ましい)
  • 日本人との交流促進の機会提供
  • 転職支援(非自発的離職の場合)
  • 定期的な面談と行政機関への相談支援

これらを自社だけで実施するのが難しい場合は、登録支援機関に委託することが認められています。ユアブライトも登録支援機関(登録番号:19-登-000992)として支援業務を代行しており、母国語対応スタッフが入社後のオリエンテーションから生活支援まで担当します。

定期届出・随時届出の義務

特定技能外国人を受け入れている企業は、出入国在留管理庁に対して四半期ごとに定期届出を行う必要があります。届出内容には、活動状況・報酬の支払い状況・支援計画の実施状況などが含まれます。転職・離職・行方不明などの事由が生じた場合は随時届出も必要です。

届出漏れや虚偽届出は行政指導・特定技能受入れ資格の取消しにつながるリスクがあります。管理担当者を社内で明確にし、届出時期をカレンダーに登録しておくことを推奨します。

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現場でよくある相談と失敗パターン

採用手続きを完了したあとに発覚するトラブルには、いくつかのパターンがあります。同様の相談を繰り返し受けてきた立場から、代表的な失敗事例と具体的な回避策を整理します。

失敗パターン1:在留資格の期限切れを社内で把握していない

採用時点では在留期限が残っていたが、更新時期を誰も管理していなかったために気づかないまま就労を継続させてしまったケースです。在留カードの有効期限が切れると在留資格が失効し、そのまま就労させると不法就労となります。

回避策:採用時に在留期限をExcelや人事システムに登録し、期限の3か月前にアラートが出るよう管理する。更新手続きには行政書士への依頼も含め、余裕を持ったスケジュールで進める。

失敗パターン2:日本語のみの説明でコミュニケーションが断絶する

就業規則・業務マニュアル・社内規定を日本語のみで渡し、外国人材が内容を理解できないまま署名させたケースです。後に「聞いていなかった」「理解できなかった」とのトラブルに発展し、早期離職や労使紛争に至ることがあります。

回避策:重要書類は母国語または英語でも準備する。口頭での説明も通訳を介して行い、理解できたことを確認してから署名を求める。母国語対応スタッフを持つ登録支援機関を活用することで、入社直後のオリエンテーションを充実させることができます。

失敗パターン3:支援計画が書類上だけで実施されていない

特定技能人材の支援計画を策定したが、実際の面談記録や生活支援の記録を保存しておらず、出入国在留管理庁の指導を受けたケースがあります。支援計画の実施は「記録として残すこと」も含めて義務です。

回避策:面談記録・オリエンテーション実施記録・相談対応履歴を書面で保存する。登録支援機関に委託している場合は、定期的に報告書の共有を求め、実施状況を把握する。

失敗パターン4:業種・職種要件の確認不足で採用後に問題が発覚する

特定技能の在留資格には業種・職種の限定があります。例えば、特定技能「飲食料品製造業」で採用した外国人材に、当初予定外の外食サービス業務をさせていた場合、資格外活動に該当する可能性があります。

回避策:採用前に在留資格の活動範囲と自社の業務内容が合致しているかを専門家(行政書士・登録支援機関)に確認する。配置転換の際も在留資格の活動範囲を再確認する。

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採用担当者が見落としやすいポイント

在留カードの「就労制限の有無」欄を必ず確認する

在留カードの「就労制限の有無」欄には「就労不可」「在留資格に基づく就労活動のみ可」「指定書により指定された就労活動のみ可」などの記載があります。カード表面だけ確認してカード裏面の注記を見落とすケースが多いため注意が必要です。留学生で「資格外活動許可書」を持つ場合は週28時間以内という上限があります。

雇用保険の週20時間要件と31日要件を事前に確認する

雇用保険の被保険者となるには「週20時間以上の所定労働時間」かつ「31日以上の雇用見込み」の両方を満たす必要があります。外国人材をパートタイムで採用する場合、この要件を満たすかどうかを採用前に確認し、適用の有無を判断しておくことが重要です。

在留資格の更新は本人任せにせず社内で管理する

在留資格の更新手続きは本人が行うものですが、企業としても更新時期を把握し、書類準備のサポートや行政書士への費用負担などを検討することで定着率の向上につながります。特定技能1号の在留期間は通算最長5年です。更新のたびに必要書類が発生するため、採用担当者が更新スケジュールを一元管理することが求められます。

図解:採用前確認フロー(担当者の実務判断フロー)

採用候補者が現れた際の確認フローを以下に示します。このフローをチェックシートとして現場に配布することで、担当者が変わっても一貫した確認が行えます。

  1. 在留カードを原本で受領 → 候補者から直接預かり、コピーも保管する
  2. 在留資格の種類を確認 → 就労可能な資格かどうかを判断。就労不可の場合は採用不可または資格変更の検討へ
  3. 雇用予定ポジションと活動範囲を照合 → 業務内容が在留資格の活動範囲と合致しているかを確認。合致しない場合は採用不可
  4. 在留期限を確認・社内カレンダーに登録 → 期限切れでないことを確認し、3か月前アラートを設定
  5. 就労制限の有無欄を確認 → 「就労不可」の記載がないか、資格外活動許可書の有無を確認
  6. 在留カード番号の失効照会を実施 → 出入国在留管理庁のシステムにアクセスして確認
  7. 問題なければ採用手続きへ → 採用後の届出・社会保険手続きに進む

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採用前後の実務チェックリスト

以下は、外国人採用の担当者が採用決定から入社後の継続管理まで使用できる判断基準です。抜け漏れがないか、採用のたびに照合してください。

採用決定前(内定通知前)のチェック

  • 在留資格の種類と就労可否を確認した
  • 雇用予定の業務内容が在留資格の活動範囲と合致していることを確認した
  • 在留期限を確認し、期限切れでないことを確認した
  • 出入国在留管理庁のシステムで在留カードの失効照会を実施した
  • 特定技能の場合、自社の業種が受入れ対象であることを確認した
  • 特定技能の場合、受入れ人数枠に余裕があることを確認した

採用決定後・入社前のチェック

  • 労働条件通知書を書面で準備した(多言語対応が望ましい)
  • 在留期限を社内の人事管理システムまたはExcelに登録し、更新アラートを設定した
  • 在留資格の変更・更新が必要な場合、申請スケジュールを確認した
  • 特定技能の場合、支援計画を策定した(または登録支援機関に委託した)
  • 雇用契約書の内容を本人が理解できる言語で説明し、確認を取った

入社後・継続管理のチェック

  • ハローワークへの外国人雇用状況届出を雇入れ翌月10日までに実施した
  • 健康保険・厚生年金の加入手続きを完了した
  • 雇用保険の加入手続きを完了した(週20時間以上・31日以上の雇用見込みがある場合)
  • 特定技能の場合、四半期ごとの定期届出時期を社内カレンダーに登録した
  • 定期面談の実施記録・支援計画の実施記録を書面で保存する体制を整えた

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まとめ

外国人採用の注意点は、大きく「在留資格の確認」「労働条件・社会保険の法的整備」「ハローワーク届出の義務履行」「特定技能固有の支援手続きの実施」という4つの軸に整理できます。いずれも見落とすと企業に刑事・行政リスクが生じる重要な対応であり、採用フローとして標準化しておくことが求められます。

本記事の要点を整理すると以下のとおりです。

  • 在留カードの確認は採用前の必須ステップ。「就労制限の有無」欄・在留期限・失効照会を必ず実施する
  • 労働条件通知書は書面かつ多言語対応が望ましい。最低賃金・社会保険の適用は国籍を問わず同様
  • ハローワークへの外国人雇用状況届出は雇入れ翌月10日まで。未届出は30万円以下の罰金の対象
  • 特定技能1号の採用では支援計画の策定・実施・記録が義務。登録支援機関の活用が現実的な選択肢
  • 在留期限の管理・四半期届出は社内担当者を明確にし、カレンダー管理を徹底する

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この記事を書いた人

ヤマシタハヤト

ヤマシタハヤト

ユアブライト株式会社 取締役 / 登録支援機関 実務責任者。特定技能・外国人材採用・登録支援・在留資格実務を専門領域とし、登録支援機関であるユアブライト株式会社の取締役として、外国人材紹介と受入れ支援の実務に関わっています。

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