ネパールでは都市生活に不可欠なライフラインが整っていません。ヒマラヤ山脈の豊富な水資源が有効活用されず上水道の普及率は低く給水システムはかなり遅れています。首都カトマンズの生活でさえ水道、電気が安定して活用できる保障はなく、利便性を求める快適な暮らしとは程遠い不安定な日常を暮らすのが当たり前となっています。

不便が日常となる生活というのは、それなりに工夫やアイディアに飛んだ暮らしぶりができるようになり、当たり前ですが水を無駄に使わない暮らしが出来るようになります。

蛇口から水が出ない

カトマンズでは今だ水道工事を行っていない地域や家庭もあり、配管工事が済んでいても時間帯限定で水が来たり、一日おきに水が来たりといったありさまで、水が毎日好きなだけ使えるという生活は期待できません。…なので水が来ない日が続くと蛇口からは水が出てこないので色々工夫をするわけです。

ネパール一般家庭の水道設備

一般的にネパールの家の敷地内には、地下タンクが設けられていて外部の配管から地下タンクへと水が来るようになっています。地下タンクに溜まった水は、モーターを使って家の屋上に設置してある給水用タンクにくみ上げると水道の蛇口から水が出るようになります。外部の配管から水が来ない日が続いた場合には、水の運搬業社から水を購入し活用すこともできます。

ただ、一般家庭で水を購入することは稀で、隣近所で水のある家庭から分け合って済ませてしまう場合が多く、ネパール人の思考の特徴は水に限らず、お金を使って買うことよりもご近所コミュニティをフルに活用することをまずはじめに考え実行します。

まだまだ蛇口から水が出て来ません

ネパールでの暮らしは、水が来る時間帯を確認することや地下タンクに溜まった水を屋上タンクにモーターで汲み上げることや、水不足の時は水を購入する手配をするとか、水管理だけでも忙しくいろいろあります。

また、水が使えるようになるまでには、時にはいくつかの難関が押し寄せて来る場合もあります。

例えば、停電が続いた場合にはモーターが使えないので水をくみ上げることができず蛇口から水はでない…とか。水の運搬業社に注文した日に運悪く家の前の道路が工事中で車が通れず工事が終わるまで何日か水を待つ日が続く…とか。水を運ぶ運搬車が故障で来られない…とか。ネパール全土がガソリン不足で運搬車が来られない…とか。いろいろな理由で水が蛇口から出て来るまでに日数がかかることが良くあります。

ネパールの停電事情は、4年前くらいから解消して来ているのですが。時々前触れもなく長時間停電が続くこともあります。計画停電があった当時は一日16時間を越える停電もありました。

ネパールの道路工事では、一般人の都合を考えるとか、お知らせを通知するとかの配慮は全くなく、ドンドン勝手に工事を進めてしまうのが普通で、いろんな不都合が起こることが頻繁にあります。

ネパール式飲料水の飲み方

蛇口の水は水質が悪いので飲料水には使えないため、沸騰した水、ろ過した水、ミネラルウォーターなどを利用しています。水道水が飲めないので前もって飲料水を確保するためにペットボトルに入れて置いておく習慣があります。ネパール人の家では、コカ・コーラやファンタやスプライトのペットボトルを再利用し、飲料水用のボトルとして活用するのが一般的です。

ペットボトル入りの飲料水は、ボトルの飲み口に触れずに数名で回し飲みするのがネパール式の飲み方です。各家庭にはペットボトルに入った飲料水が部屋の隅に置いてあって、訪問者はペットボトルに入った飲料水を自由に飲むことができます。飲み口に口をつけずに飲む方法は慣れないとむせるのでちょっと難しいです。

水汲み場での女性たち

家に水道を引いていない家庭では、早朝、地域ごとに設けられている公共の水汲み場に行って水瓶に一日分の水を汲みに行きます。水汲み作業は女性や幼い子供たちの仕事です。水瓶に汲んだ量だけで一日分の水を賄うというワザは、ネパール人の得意とする暮らし方のお手本です。

ネパール人の考え方には、無いものは無いから仕方ない、有るものは捨てずに最後まで使い切るというのがあります。水瓶に入った水量でやりくりするというのはネパール人ならではの生活の知恵が発揮されています。

水汲み場での女性たちの様子には、絶え間ないおしゃべりや、時には水の奪い合いで大声でケンカしているのが聞こえてきます。ネパールの女性が家庭の中で置かれている立場は狭くて弱く、水のやりくりをしているのも女性の役割である為、日頃のストレス発散のため女性同士のケンカが勃発するようです。

水が豊富に使える日ホーリー

ネパールの春を迎える祭り「ホーリー」では、水や色粉を掛け合って楽しみます。この日は日頃の水不足や水にまつわる云々を忘れて水を掛け合ってはしゃぎまわります。「ホーリー」はインド・ネパールのヒンズー教の祭りで、水や色粉を掛け合って邪気を追い払うというような意味があります。

ネパールの暮らしは何かと不便なことばかりなため、こういった祭りの日には日常を忘れて明るく楽しく過ごすというのがネパール人のライフスタイルです。

さいごに

暮らしの基本となるライフラインが全く当てにならないネパールです。

なので、水が無かったらどうするか?ある水をどのように使えばよいか?などの対応には、水不足の経験からネパール人独特の知恵が生まれています。

節約や不便という概念が、ネパールと日本では雲泥の差があることがネパール暮らしの中からわかります。水は必要な分だけあれば良いだけ、エンドレスに流れてくる蛇口からの水がなくても生きていけるということをネパール人は実践して教えてくれます。

この記事を書いた人

shyu

海外在住ライター/ネパール国籍の配偶者と日本国籍の息子と日本人の私の3人家族。カトマンズに12年暮らす。 海外に住むということは、国籍はもちろん生まれも育ちも違う者どうしが、なんらかの関係性を保ちながら生きる修行をしているようなもの。 今後、日本で暮らし働く外国人が増えて行くことが予想される中、その動向を外国人の心情に寄り添った視点で発信していきたい。

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