コンビニや建設現場や介護施設、ホテルのレセプションなど様々な業種に以前より外国人の働く姿を見かけることが多くなって来ています。

日本政府は、私たちが日常の中で関わることが増えてきた外国人を移民とは区別し、日本の人手不足の産業に対応できる労働力として位置付けています。

現在の入管法では、日本で働いたり学んでいる外国人は在留資格を取得し、限定された在留期間だけ日本に住むことができるような仕組みとなっています。

この在留期間を過ぎると、継続して日本に住むために更新する、または本国へ帰国するなどの選択をします。在留外国人はそれぞれの在留資格の持つ要件によって、日本に居住する期間や活動内容が定められています。

移民というのは、この在留期間の制限がなく日本に滞在できる在留資格を持つ外国人を示し、日本人に近い条件を得ることができる永住権を取得した外国人は、他の在留資格よりも制限の少ない条件下で日本に住むことができるようになります。

現在、海外からの往来が多い、留学生や技能実習生、特定技能外国人などは、在留期間の制限が設けられているため、現時点では制度上、移民の対象とはなっていません。

ただし、今後、在留資格の持つ要件が改定されることや、他の在留資格へ移行できる仕組みや、優秀な外国人人材が活躍できる社会制度が整ってくることによって、留学生、技能実習生、特定技能外国人の中から、日本に定住化する移民と呼ばれる外国人が増えて来ることも否定はできません。

移民とは?

国際移住機関IOMによる移民の定義は、以下のように説明されています。

『本来の居住地を離れて、国境を越えるか、一国内で移動している、または移動したあらゆる人』

※「国際移住機関IOM」 … 世界的な人の移動の問題を専門に扱う唯一の国連機関  

労働者から移民になる

現在、日本へ来日している外国人の流れは、移民受け入れではなく期間限定付きの外国人労働者であるということが、日本政府の方針となっています。ただ事実上では、積極的に外国人受け入れ政策を進めているという現状もあります。

2019年4月よりスタートした特定技能制度は、5年間で34万5000人を受け入れる計画となっており、日本の人手不足解消策となる外国人労働者を、移民導入の始まりであると解釈することもできます。

外国人労働者の受け入れは増加傾向にあり、2020年12月時点での在留外国人数は2,887,116人となっています。コロナ禍の影響もあり、前年度と比べて4万6,021人(1,6%)減少となっていますが、政府の意向や日本のグローバル化に伴って今度、在留外国人の増加は予測されています。

移民が増えると起こること

外国人(移民)が増えることに対して、日本国民の意識調査では賛否両論あるようです。

外国人に対する先入観や実際に外国人と関わったことのある経験数などにより意見は様々です。

外国人をポジティブに受け入れない人たちは、外国人と日常で関わりを持った経験が浅く、外国人の犯罪による影響や治安が悪くなるかもしれないと言う不安、社会保障の負担が増えることへの懸念などから、イメージ先行で否定的な印象を持っている場合もあるようです。

外国人と共に暮らし働く日常が、難しいという現実は確かにありますが、日本社会が外国人を積極的に受け入れていくことが想定されている限り、移民政策を柱に、日本国民は常に外国人と関わる場面ごとに価値観や思想を変えていく必要があり、そうでなければ対応できない現状が迫っています。

移民の増加と治安悪化

では、移民が増えると治安が悪くなる、犯罪率が上がるなどの懸念について、どう考えたら良いのか?

例えば、ニュースに流れて来る技能実習生の失踪問題を例にあげてみますと、その原因となるのは就労環境による影響が大きいことがわかって来ています。

日本社会の中で外国人が置かれている状況が、本人の満足度によって違いが生じ、紙一重の違いによって犯罪者や不法移民となる結果が生まれてしまいます。

外国人が増えることが即、治安悪化や犯罪に繋がるとは言えない部分もあると言うことを理解し、環境による影響が大きいことを踏まえて、外国人に対しての一方的な見方を見直す必要があります。

また、異文化の中での生活や就労がもたらすストレスが、どこかでねじれてしまう原因と、もともと何でもない一個人の外国人が違法に走ってしまうまでの理由について、外国人と関わる者は、外国人の置かれている背景についてもう少し理解度を深めることも必要になっています。

犯罪が起こる原因が、外国人であるからと言う単純な理由ではないことに気付いて、偏った風潮や、反復される外国人のイメージにならないことが期待されます。

育コストが増加することについて

移民が増えることで対応が必要なことは、言語の教育費用です。日本では共通語となる英語の取得率が低いため、日本語の教育が不可欠です。国や自治体が負担する外国人のための教育コストは、今まで以上に増えることが予測されます。

2020年1月文部省発表による「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」によりますと、日本の公立小学校、中学校、高等学校、義務教育学校、中等教育学校、特別支援学校を対象とした調査結果では、外国人児童数5万1126人、2年前に比べて7179人(16.3%)増加となっています。

外国人は日本で仕事が安定してくると、配偶者や子供または親せきの子供たちを順番に呼び寄せるケースが多く、ここで問題となるのは、義務教育を受ける年齢の子供の教育費についてです。

文部科学省は2020年発表の「外国人の子どもの就学状況等調査結果」によりますと、外国人の子ども1万9,471人が不就学の可能性があるという結果が出ています。

不就学の理由としては、日本語の理解不足により不登校となってしまいうケースがあります。そのまま教育を受けずに成人になっていくことが懸念されている問題です。

海外の移民問題として共通する、移民の子供に対する教育施策は大きな課題となっています。

社会保障費が増えることについて

現在、人手不足解消策となる特定技能制度は、日本人と同等に社会保険の加入が義務付けられています。

この背景には、以前、未加入の外国人労働者がケガや病気になった時の対応に不備が生じたケースや、保険料未払いの問題等があったため、特定技能制度では、外国人との雇用契約の際に必要な手続きとなっています。

将来的に日本が移民政策に大きく舵を取った場合には、外国人が対象となる社会保障費について、制度の仕組みの見直しが課題となっています。

さいごに

日本の移民受け入れ政策は、まだ消極的な始まりとなっていますが、今から少しづつ外国人と共に暮らしていく日本について考えながら、積極的に外国人との交流に参加したり異文化を体験することが、外国人と共に働いたり学んだりする際に役立つこととなるのでしょう。

この記事を書いた人

shyu

海外在住ライター/ネパール国籍の配偶者と日本国籍の息子と日本人の私の3人家族。カトマンズに12年暮らす。 海外に住むということは、国籍はもちろん生まれも育ちも違う者どうしが、なんらかの関係性を保ちながら生きる修行をしているようなもの。 今後、日本で暮らし働く外国人が増えて行くことが予想される中、その動向を外国人の心情に寄り添った視点で発信していきたい。

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