在留資格「特定技能」は、一定の専門性・技能を有する外国人材を受け入れる制度として平成31年4月1日に施行されました。その背景として、国内で深刻化する人手不足の問題があります。生産性の向上や国内人材の確保のための取組みをおこなった上でなお、人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野18職種が対象になっています。介護職もそうのうちの1つです。

2040年までの人口構造の変化

(出典)総務省「国勢調査」「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口 平成29年推計」

国内の人口動態は、いわゆる団塊の世代が全員75歳以上となる2025年に向けて高齢者の人口が急速に増加した後、緩やかになってきます。一方で、既に減少に転じている生産年齢人口は、2025年以降さらに減少が加速していきます。

 2019年4月に特定技能の制度は創設され、日本政府は当初、人手不足が深刻な介護業界は、特定技能制度開始から5年間で最大6万人の受け入れを目標にしていました。

しかし、介護業界では343人の受け入れしか進んでおらず、18職種のうちどの職種よりも当初の計画を大幅に下回っています(2020年9月末現在速報値)。

 在留資格「特定技能1号」を取得するためには、介護分野の技能実習制度において、2号技能実習を修了することです。2号技能実習の修了者は約3年間(3号は約5年間)介護施設で実務経験を積んでいるので、即戦力の人材になることは間違いありません。

ただし、技能実習制度において「外国人介護人材」の受け入れを開始したのは2018年7月以降なので、在留資格「特定技能1号」への移行が始まるのは、必然的に2021年の7月以降となってしまうのです。このような要因もあり、介護分野の「特定技能」への受け入れは、目標の6万人には程遠い現状となっています。

また、日本だけでなく台湾、韓国など他のアジア諸国でも深刻な高齢化が進んでいるため、外国人介護人材は人気があり、他国と人材の取り合いとなっている状況も否めません。

国内での特定技能試験の実施状況

 令和2年4月1日以降の国内試験から受験資格が拡大されました。これまで日本国内での受験対象者は、「中長期在留者及び過去に中長期在留者として在留していた経験を有する方」などに限られていたところ、これを「在留資格を有する者」として在留資格をもって在留する外国人の方については一律に受験が認められることとなりました。

 これにより、過去に中長期在留者として日本国内に在留した経験がない外国人の方であっても「特定技能」の受験を目的として「短期滞在」の在留資格により入国して受験することが可能となったのです。

 2020年1月に世界中で蔓延し始めたコロナウイルスの影響もありましたが、国内では介護分野における特定技能外国人の受入れに必要な、介護技能評価試験・介護日本語評価試験は毎月実施されていました。直近では、2021年2月に国内で実施された試験結果が厚生労働省のホームページに掲載されています。フィリピン、カンボジア、ネパール、ミャンマー、タイ、モンゴル、インドネシアの7カ国の在留外国人受験者のうち、介護技能評価試験受験者は1902人のうち合格者1304人(合格率68.6%)、介護日本語評価試験受験者は1699人のうち1438人(合格率84.8%)という結果でした。

海外での特定技能試験の実施状況

 国外で特定技能試験が実施されている国は、タイ、カンボジア、フィリピン、モンゴル、インドネシア、ネパールの7カ国です(2021年4月5日現在)。 ミャンマーは、現在一時停止措置となっています。

2021年4月現在も、ベトナム国内では特定技能試験は実施されていません。前年はコロナウイルスの影響によりベトナム国内がロックダウンしてしまい、とても試験が実施される状態にはありませんでした。しかし今年に入りベトナムの「特定技能」に関して具体的な動きが出てきたようなので、今後の動向に注目と期待が高まります。

まとめ

  「特定技能」では2019年からの5年間で約6万人の受入れを目指していますが、2020年6月の時点で、介護職の技能実習生はわずか1324人。このうち2021年7月以降、技能実習から「特定技能1号」へ移行する人数を考慮したとしても、2026年までに政府が目標としている約6万人の外国人介護人材には遠く及びません。(参照元:出入国在留管理庁)

  また、介護職は高度なコミュニケーションを必要とする仕事であるため、日本語の修得が必須です。介護における日本語学習をおこなうための時間の確保、介護技能向上のための研修の実施、介護業務や生活面での悩みに関する相談支援の実施など、受入れ機関は外国人介護人材を取り巻く環境整備が必須です。

  今後は他国との外国人介護人材争奪戦に勝つためにも、外国人介護人材が国内の介護現場において円滑に就労・定着できるように、受入れ環境の整備が強く求められるでしょう。

この記事を書いた人

ヤマシタハヤト

ユアブライト株式会社 海外人材担当 主にベトナムに関する情報を発信しております。

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