日本とベトナムでは、食事のマナーに大きな違いがあります。日本人にとって当たり前のことでも、ベトナム人にとってそうであるとは限りません。そのため、食事マナーの違いが原因で衝突が起こることも珍しくありません。そのため、ベトナム人と食事をする予定がある人は、それぞれの考え方の違いを理解しておくことが大切。そこで、日本とは全く異なるベトナムの食事マナーについて解説します。

ベトナムの食事マナー①:味付けを変えても問題なし

ベトナムでは、お店でも家庭でも、出された料理を自分好みに味つけしても、マナー違反とはなりません。

ベトナムの料理の味付けは最低限

ベトナムでは、食堂やレストランで提供される料理の味付けは、最低限にとどめられています。日本でも有名な麺料理のフォーも、鶏の骨からとったダシに「味の素」を入れているだけで、とくに凝った味付けはしていません。野菜炒めも同様で、味の素と醤油をさっとふりかけた簡単なもの。濃い味が好きな人にとっては、物足りなく感じるさっぱり味です。

調味料で料理の味をアレンジ

だからと言ってベトナム人が薄口派というわけではありません。さまざまな調味料を使って自分好みに料理をアレンジするのがベトナムスタイル。調味料の定番は、チリソース、甘口醤油、にんにくと唐辛子を漬けたピリ辛酢など。ケチャップ、唐辛子のみじん切り、コショウ、魚醬も必ず常備されています。調味料を直接つけたり、オリジナルのソースを作ったりと、それぞれの食べ方を楽しみます。

家庭の食卓でも味変OK

日本では、出された食事の味付けを勝手に変えるのはマナー違反。お吸い物に醤油を足した、炒め物にマヨネーズを加えたなどの行為で、夫婦関係に暗雲が立ち込めたという話はよく聞くでしょう。ベトナムでは、家庭の食卓でも料理の味を勝手に変えるのは問題なし。招待された家でも同様です。料理をより美味しく食べるために、むしろ味変は推奨されています。

ベトナムの食事マナー②:味の好みをはっきり言う

日本では、基本的に出された料理は美味しくいただくのがマナーですが、ベトナムでは必ずしもそうではありません。

好き・嫌いが明確なベトナム

ベトナムでは、日本のようにオブラードに包んで、本音を遠回しに伝えることはしません。「私はこれが好き」「私はこれが好きじゃない」の2択と言っていいほど、意見をはっきり伝える国民性があります。そのため、自分好みの料理であれば「とても美味しい!」と喜びます。一方、苦手な味であったら、無理して食べることはなく、手つかずのまま残してしまいます。そのため、表情だけで味の好き・嫌いが簡単に分かります。

はっきり言うことが礼儀のベトナム

日本では、出された料理を不味いと言うと、相手はがっかりしたり、不快に思ったりします。そのため、苦手な料理を無理して食べた経験がある人も多いでしょう。ベトナムでは、本音を隠すのは逆に失礼という考えがあります。はっきりと感想を伝えることはむしろ礼儀。次の機会があったら、その人の好みの料理を準備できるため、ありがたいと思われます。

日本のマナーを教えておこう

とはいえ、ベトナム人のはっきりとした言い方は、日本人にはきつすぎるというのは確か。人によっては、そんな言い方をするなんて失礼だと、嫌な気持ちになるかもしれません。取引先やお客さんが相手だったら、悪気がなくても問題が大きくなる可能性もあります。そのため、ベトナム人のふるまいに気になる点があったら、日本の食事マナーを教えておいたほうがいいでしょう。

ベトナムの食事マナー③:誘った人がお金を出す

ベトナムでは、食事をおごる基準が日本とは異なります。そのため、良かれと思っておごると、それが衝突の原因になることもあります。

食事をおごることに年齢や立場は関係なし

日本では、みんなで食事をしたら、年上の人や立場が上の人、あるいは男性がまとめて支払うのが、暗黙のルールという一面があります。しかしながらベトナムでは、年齢、立場、性別が、お金を出す根拠とはなりません。基本的には、食事に誘った側が支払うのがマナー。相手が上司であっても高収入であっても関係ありません。

おごることは感謝の気持ち

ベトナム人にとって食事をおごることは「感謝のしるし」。相手が上司や先生であれば、参加してくれたことに対する感謝の気持ちはさらに高まります。また、来客をもてなすことを重視するベトナムの文化も、おごる行為につながっています。「来てくれてありがとう」、これがベトナム人の心の底からの気持ちなのです。

無理に奢ると気分を害することも

日本人とベトナム人が一緒に食事をすると、日本人のほうがお金を持っていることが多々あります。そのため、ついつい自分が多めに支払おうとするものです。しかし、ベトナム人が遠慮しているのに無理にお金を出そうとするのはNG。ベトナム人の感謝の気持ちを否定するのみならず、プライドを傷つけてしまう恐れがあるので配慮が必要です。

まとめ

ベトナム人は、日本人とは異なる食事マナーに慣れ親しんでいるため、思いがけない言動に驚くこともあるでしょう。日本人にとって失礼と感じられても、ベトナムではそれが礼儀ということも多々あります。そのため、気分を害する言動があっても、すぐに注意するのではなく、徐々に日本の食事マナーを教えていくことが大切です。

この記事を書いた人

ひこすけ

大学にて10年間勤務したのち、ベトナム現地企業にて、地方中小企業の販路拡大支援に従事する。大学では留学生、ベトナムでは現地スタッフ指導経験あり。日本語教育にも関わっていました。現在はライターとして活動中。

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