日本で働く外国人にとっての文化的なギャップは、将来的に良い影響となることが理想的です。

外国に住み始めてまず体験する異文化は、味わったことのない海外の料理です。日本料理はアジアの料理に比べると辛味がなくあっさりとしていることが特徴的です。日本とは全く異なる食文化の国の外国人にとっては、日本の独特の食事に慣れるまでは時間がかかることでしょう。

多国籍のエンジニアが集まる海外の建設現場や大手企業の海外支社などでは、各国の料理人を雇って母国料理が食べられる食事環境を提供している例もあります。

日本で働く技能実習生や特定技能外国人が就労する労働環境には、なかなかそういった食生活のサポートまで行き届かない場合が大半ですが、外国人社員とのコミュニケーション手段として海外の食文化について関心を持つことも大事なこととなるでしょう。

今回は日本で就労する外国人の中でも、今度増加が期待される国籍、ネパールの食文化や習慣マナーについて紹介していきましょう。ネパール人の中でも宗教感や日頃のマナーに対する意識は個々に異なります。ネパール国内を一歩出てしまえば自由に行動するタイプの人と、海外で生活していてもネパール人としての習慣マナーを維持したいタイプの人もいます。

ネパール人雇用の際は、個々の習慣に合わせてフレキシブルに対応していけるといいですね。

ネパールの食文化

ネパールの食文化は、隣国のインド、中国、チベット料理の影響が大きくネパール国内では多国籍な料理が楽しめる環境があります。

食文化が豊富なネパールの中でもネパール庶民が一番好んで毎日食べる料理は「ダルバートタルカリ」です。ネパールの国民食「ダルバートタルカリ」は、インド料理に比べるとスパイスが少なめで野菜を豊富に使ったへルシーなメニューが多く、日本人の口にも馴染みやすい料理です。

また、ネパールは多民族国家であるため民族料理も様々。代表的な料理ではタカリ族料理ネワール族料理です。ネパールの民族料理の中でも食材や味付けが特徴的で、ネパール国内でも2大民族料理は庶民に人気です。

ネパール人の食生活

ネパール人の食事のルーティンは、朝の軽食+朝食+おやつ+夕食が一般的です。

朝の軽食には、ネパールティ(砂糖とミルクたっぷりの紅茶)とビスケットやパンなど。食事は1日2回で「ダルバートタルカリ」。おやつは、各家庭によってそれぞれ異なりますが、例えば、揚げた甘いお菓子、チャウミン(焼きそば)、チュウラ(米をつぶしたフレーク)とスパイスのおかずなどが代表的なメニューです。

食事時間は、朝起きたら軽食、10時くらいに朝食、3時頃におやつ、7時以降に夕食が一般的ですが、各家庭によっては家族の出勤や通学に合わせて時間はまちまち、食べる回数も1日2回の食事だけの人もいます。

「ダルバートタルカリ」

ネパールの国民食を「ダルバートタルカリ」と言います。

言葉の意味は、ダル(豆スープ)バート(米飯)タルカリ(野菜のおかず)です。

ダルはネパール人家庭の食卓に欠かせない栄養価の高いタンパク源となるスープです。ネパールの国民の50%以上は米を主食とした食文化を持ち、米をたくさん食べる習慣があります。米の種類にもよりますが1㎏70ルピーくらいで購入できます。

タルカリは、スパイスを使って炒めた野菜のおかずです。油たっぷりめで青唐辛子や赤唐辛子を使って辛味のある味付けが一般的です。

「ダルバートタルカリ」にはアチャールという酸味と辛味のある漬物が必ず添えられ、ヨーグルトや卵料理や肉料理がプラス食卓に上がることもあります。

日本に住む在留ネパール人が増えている影響で、最近では日本でも現地に近い味のネパール料理屋が増えています。東京の新大久保、通称リトルネパールでは、ネパール食材が調達できたり「ダルバートタルカリ」を安価で食べられるお店もあります。新大久保通りに行けばネパール人ネットワークが広がると言われるほど、衣食住の情報が集まる場所となっています。

料理は手で食べる、ヒンズー教による食事の作法

ネパール人の食事の食べ方は、右手の指と手のひらを器用に使って食べます。

アフリカ、中近東、インド、東南アジアを中心に多い手食文化は、習慣の違いから行儀が悪いイメージに捉えられがちですが、ネパールでは食事前に丹念に手を洗う習慣があり、清潔な自分の手で食べるため衛生面は保たれています。食事の前に手を洗う洗面台は、食べ終わった食器類を洗う洗面台とは別の場所で洗うのがネパールの習慣です。同じ洗面台を使うことは衛生的ではない不浄であると考えられています。

食事前の作法としては皿に盛りつけられた料理を少しつまんでテーブルに置き食事の前の礼拝を行う習慣があります。

ネパールでは人が手を付けた食べ物や飲み物、お皿を共有する習慣はありません。テーブルに置かれた大皿からおかずを取って食べるような食べ方はしません。「ダルバートタルカリ」は、一人一皿に盛り付けられた料理を食べます。

お代わりをよそる場合はキッチンに控えている給仕または家族の中の女性が世話を務めるようになります。

家庭の中で女性が料理担当である場合が多いのですが、生理中の女性は、キッチンに入ることは禁じられていますので、生理期間中は家族の中の誰かが料理をするようになります。

低カーストと食事

カースト(身分階層制度)は、法律上廃止されていますが現実は異なり、まだまだ古い社会風習が残っているネパールでは、日常生活の中でカーストを意識させられる場面がよくあり、ネパール人同士の交流にはカーストを踏まえた付き合い方が暗黙の中行われています。

食事についても低カーストの人とは一緒に食事をしないという習慣が残っていて、低カーストとは境界線のある付き合い方をしなければならないことがあります。

宗教的行事の日には食事制限あり

ネパールは主にヒンズー教を崇拝している民族が多く、信仰深い場合、肉魚類を食べない習慣のベジタリアンがいます。また、宗教行事の日には食事をとらず沐浴(水浴び)を行い一連の儀礼が終了してから食事をするようになります。

身内が亡くなった場合や法事の日にも食事制限や行動の規制があるため、来客があった際は、ひとこと食事に関して聞いてからおもてなしをするようになります。

まとめ

ネパールの食文化では、日本のマナーとは異なった様々な作法があり、宗教マナーにそったネパール独特の習慣が特徴的です。また多国籍な外国人や多民族が居住するネパール社会には、食文化以外にも多様な文化が混在しています。

この記事を書いた人

shyu

海外在住ライター/ネパール国籍の配偶者と日本国籍の息子と日本人の私の3人家族。カトマンズに12年暮らす。 海外に住むということは、国籍はもちろん生まれも育ちも違う者どうしが、なんらかの関係性を保ちながら生きる修行をしているようなもの。 今後、日本で暮らし働く外国人が増えて行くことが予想される中、その動向を外国人の心情に寄り添った視点で発信していきたい。

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