今回は、ネパールの首都カトマンズでの人材雇用管理の際に気を付けたいポイントについて、現地の経営者と他の起業家の経験談をもとにまとめてあります。これらの内容は、日本国内でのネパール人人材雇用において参考となるヒントになるでしょう。

1責任感について

従業員に対して責任感を問うような職場環境は敬遠されます。新人の従業員に限らず、勤務経験のある中堅の従業員に対しても期待できません。キャリアによって生じる責任感についてはネパール人人材育成の中では難しい課題です。大半の雇用主は、従業員に対して常にトレーニング期間中であるという前提で対応します。キャリアによる責任感が従業員の成長として見られない理由としては以下のような要因があげられます。

※ネパールのインフラ未整備の影響による従業員のモチベーションの低下
※有能な人材は海外就活へと移行する傾向であること
※キャリアパスについて概念がないこと

ネパール人従業員に対しては、事前の社員教育の強化よりも実践の中から生じる問題に臨機応変に対応します。責任感についての事前教育は、個人々の能力に合わせて指導します。

2雇用期間について

有能な人材を長期にわたって雇用することは難しいため、スタート時には短期雇用を目安にし継続が可能な場合においてはさらに中期的に、そして長期的にと期間を延ばしていく雇用形態が理想的です。上記1の項目にあげました※3つの理由は、従業員の雇用期間が長続きしない理由付けにも共通します。

3インセンティブ制度

従業員は、雇用スタート時の数か月間は雇用側に対して真面目に働く態度を見せてくれます。その間に勝ち取った信頼は、意図したわけでも無く数か月後にはゆるみ始めます。持久力が乏しいため結果がでない形で終わることが多く見られます。こういった従業員に対してはモチベーションアップのための動機付けや成果物に対しての報酬など、定期的なインセンティブ制度を取り入れる必要があります

4インフラ未整備による影響

首都カトマンズでさえ基盤となるインフラ整備が遅れている現状、人材育成やキャリア開発に対してはリソース不足であり、有能なネパール人の大半はインフラ整備された海外へと出て行く傾向となっています。国内に残っている人材を雇用する場合においては、個人の能力を尊重し共有し合える環境が必要とされています。ネパール国内では専門性の高い人材が不足しているため、各業界いずれも生産性とその成果物のクオリティは低めとなります。

5海外への幻想

「海外暮らしで楽になる」という幻想は、ネパール人の発想から取り除くことは難しく更に「それはお金のために」という目的のみの行動は、良い結果に繋がりません。こういった考え方の人や従業員への対処法として、物質文明による近代化が起こした問題についてレクチャーをします。「海外暮らしで楽になる」という典型的な思考パターンからの回避と自己啓発が必要となります。

6キャリアパスについて

ネパールにはキャリアパスに関しての概念がなくキャリアを磨く環境が整っていません。専門性を貫いて進むという思考はリスクが高く、どちらかというと業界を定めずに情勢を踏まえながら職業に向かって行く方向性に安心感があると言えます。ただし、ネパール人人材の中にもキャリアパスに関してのインスピレーションを得た人に対してはインセンティブを与え、キャリアパスに関しての指導を勧めます。

7常識のある人材

常識人が育ちにくい環境として、ネパール社会の問題/貧困・児童労働・教育水準の低さ・衛生環境の悪さなどがあげられます。劣悪な環境下に形成された人格の中でも常識ある人材は希少価値があります。社会的な立場での判断力そして実践できる常識人に対してはインセンティブ報酬を与える価値があります。

8多民族共存社会による影響

多民族国家のネパールでは各民族ごとの祝日や行事が異なるため、多民族が共存している職場では休日の取り方や勤務体制の管理が難しくなっています。カトマンズはもともとネワール族の居住する地域でしたが、現代は地方からの異民族の増加により多民族共存の社会となっています。職場や暮らし方のルールにおいても摩擦が起きることはよくあります。各民族に合わせた休日による勤務体制は、連日の休日続きで従業員のモチベーション低下の原因となっています。こういった負の職場環境をなくすための改善策が必要となっています。

9隣りの芝生は青い

「隣りの芝生は青い」という思考は、ネパール人の意識として根深く非常に粘着力のある心理です。子供から大人まで、政治家、学校の先生、職業に関わらず、会話の際には「隣の芝生は青い」という心理が垣間見れるのが特徴です。従業員に対しては、「隣の芝生は青い」に関してロールプレイ効果を取り入れて立場の逆転した心理について学ばさせます。

10「家族のために」というすり替え

先祖代々家系が軸となるネパール人の家族中心の暮らしでは「家族のために」という言葉が様々な場面で使われています。

従業員が「家族のために」という理由で職場の任務から離れる場合、それは事実であるか?または何かの言い訳のためであるか?と想像できます。「家族のために」は時には重宝な言い訳のために使われます。

ネパール社会は、家族との絆が非常に強い特徴を持っています。家族の結婚式、葬式、お祝い事、送別会など家族に関わる行事の日に仕事を休むことは、ネパールでは一般的な常識として許されています。

以上10のヒントは、ネパール社会の問題や根深い習慣を崩すための方向性として真剣に取り組むべき課題です。日本で働くネパール人人材管理においても、同様に押さえておきたいポイントです。

この記事を書いた人

shyu

海外在住ライター/ネパール国籍の配偶者と日本国籍の息子と日本人の私の3人家族。カトマンズに12年暮らす。 海外に住むということは、国籍はもちろん生まれも育ちも違う者どうしが、なんらかの関係性を保ちながら生きる修行をしているようなもの。 今後、日本で暮らし働く外国人が増えて行くことが予想される中、その動向を外国人の心情に寄り添った視点で発信していきたい。

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