韓国の外国人労働者事情~高評価されている「雇用許可制」とは?
2021.07.03
海外事情
韓国の外国人労働者事情~高評価されている「雇用許可制」とは?

韓国の外国人労働者の受け入れ政策は、日本と同様に少子高齢化による労働者不足を補う目的として実施されています。韓国では原則として専門職の高度人材のみを受け入れていた経緯がありましたが、深刻な人手不足により1990年以降、日本の制度に類似した外国人受け入れの制度が始まりました。

制度導入後には、外国人労働者にまつわる社会問題がが多く発生し人手不足解消にも不法労働者の減退にも及ばす2000年以降、大幅に制度が改変され、2004年から「雇用許可制」(Employment Permit System:EPS)が実施されています。

「雇用許可制」は、外国人労働者の人権保護や社会保障について改善策となる結果を出しています。

アジアの隣国として韓国での外国人受け入れ政策については、興味深い面があり参考になる制度です。

韓国の「雇用許可制」とは

韓国は日本の「外国人技能実習制度」の仕組みをを手本にした制度を取り入れ、人手不足のための労働者確保を続けて来ましたが、外国人の不法労働や失踪問題などにより継続を改め、2004年より実習制度という名目を排除した新たな“非熟練分野の外国人労働者”の受け入れ制度「雇用許可制」に切り替わっています。

「雇用許可制」は、人手不足が深刻な中小企業が、政府を通して外国人の雇用許可を受け、外国人の在留期間を限定し雇用することができる制度で、受け入れ産業は、製造業、農畜産業、漁業、建設業、サービス業の5業種で、単純労働者が対象となっています。

「雇用許可制」の導入は、外国人受け入れ制度の成功例として、海外や国際機関からの高い評価を受けています。、

「雇用許可制」の特徴

●仲介業者介入の禁止、政府機関が主体となる制度

日本の「外国人技能実習制度」に類似した旧制度では、不法労働者や失踪の問題がありましたが、「雇用許可制」の導入により緩和されています。

「雇用許可制」では、仲介業者を排除するために韓国政府が主体となって関与し、海外からの送り出しから韓国での受け入れまでは、雇用労働部傘下の『韓国産業人力公団』が監理しています。

「雇用許可制」では、各国送り出し国と韓国政府の協定の基、締結され、フィリピン、モンゴル、スリランカ、ベトナム、タイ、インドネシア、ウズベキスタン、パキスタン、カンボジア、中国、バングラデシュ、ミャンマー、キルギス、ネパール、東ティモール、ラオスの16カ国が送り出し国となっています。

●外国人は労働者として韓国人と同様の待遇を受けられる

外国人労働者の人権保護や社会保障について配慮される制度になっています。労働関連法に基づいて外国人も韓国人と同じように、労災保険、雇用保険、国民年金、健康保険、最低賃金、労働三権などに適用されることが認められています。

●外国人の雇用が韓国人雇用率の低下に影響されないこと

「雇用許可制」による外国人雇用では、韓国人の雇用募集枠で採用者が決まらなかった場合のみ雇用できるようになっています。また、人材不足の企業では国内での高齢者や女性を優先して雇用し、足りない採用枠に外国人を受け入れるような仕組みになっています。

●不法滞在者の減少に繋がること

「雇用許可制」では、送り出し国からの不正な行為を妨げるために、仲介業者の排除と送り出し国と韓国政府との締結によって、一連の工程が透明化され不法滞在者の減少に繋がっています。また、韓国に入国してくる外国人の人数枠や、企業での採用人数の上限も決められていることなどから、必要以上の外国人を受け入れない政策となっています。

●永住許可を想定しない制度

「雇用許可制」の種類は、一般外国人労働者と特例外国人労働者に分かれています。

特例外国人労働者は、韓国国籍の血縁関係者がいる人が対象となり、一般外国人労働者は、外国籍の者が対象となります。

一般外国人労働者の在留期間は3年、再雇用された場合は1年10カ月の延長が可能となります。

「雇用許可制」は移民対策ではなく、短期滞在で人材が入れ替われる単純労働者の確保が目的となっています。また、在留期間修了後、本国へ帰国する者に対しては、退職金として「出国保障保険金」の支給があります。

韓国での永住権に対しては、5年間の定住が条件となっているため、一般外国人労働者に対する永住権の取得については、想定された制度にはなっていません。

「雇用許可制」の評価

「雇用許可制」は、国際労働機関からの高評価と国連公共行政大賞を受賞するなど、実績による結果を出しています。

韓国ではさらに制度の充実と外国人労働者の法的保護に力を入れて行くことを公表しています。

韓国の社会統合対策

「雇用許可制」の導入は、外国人労働者の権利保障の改善と、国民の人権意識の変化に大きく影響しています。

韓国では、多文化共生社会への移行とともに発生する異文化摩擦や人権侵害、差別などの問題を回避するために、積極的な社会統合政策や定住者支援策を進め、2007年「外国人処遇基本法」が制定されています。

また2008年に成立した「多文化家族支援法」では、韓国人と外国人の婚姻や韓国で定住できるための支援を、国や地方自治体が積極的に関わって実施しています。

さいごに

韓国は日本と同様に、深刻な労働不足の問題を抱えているという共通点があります。また、韓国の外国人受け入れ対策は、社会統合政策も積極的に進め、外国人も韓国社会の一構成員として受け入れるという対応がなされています。

「雇用許可制」は、日本の在留資格「特定技能」と「技能実習」に対比して参考になり日本の制度を見直す実例となるでしょう。

執筆者:shyu

海外在住ライター/ネパール国籍の配偶者と日本国籍の息子と日本人の私の3人家族。カトマンズに12年暮らす。 海外に住むということは、国籍はもちろん生まれも育ちも違う者どうしが、なんらかの関係性を保ちながら生きる修行をしているようなもの。 今後、日本で暮らし働く外国人が増えて行くことが予想される中、その動向を外国人の心情に寄り添った視点で発信していきたい。

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