らぽーる上尾

らぽーる上尾 様

カテゴリー:
事例
2018-11-30

介護付有料老人ホーム
らぽーる上尾(埼玉県)
経営企画推進本部
広報企画主任 内山昌樹様


上尾駅からの無料送迎バスが利用でき、アクセスは良好。「らぽーる」の名の通り、地域やご利用者様との信頼関係・調和を重んじる施設です。


人材確保の未来を見据え確かな循環サイクルづくりのために

 らぽーる上尾は2007年12月に開設され、11年目を迎えた介護付有料老人ホーム。119部屋に定員140名の施設が、常にほぼ満床となっています。

「医療と介護の連携」に力を入れており、看護・介護スタッフは国の基準値の1.5倍を配置。24時間看護師常駐・24時間対応のクリニックとの連携もあり、ある介護情報ウェブサイトが行った「最高の老人ホームランキング2018年夏・安心の医療部門」で、全国第35位に選ばれました。

最寄り駅のJR高崎線上尾駅には快速・特別快速・特急が停車し、駅前には百貨店とショッピングモールを擁する地域の商業拠点です。東京駅から45分と、ベッドタウンの顔を持つ上尾市ですが、この近辺の介護人材事情はまた異なる様相を見せています。

「職員の確保に困るような状況では、まだありません。募集をすれば応募はありますね。ただ、今現在の状況とは別に、未来を見据えて『人材を確保する手段の動向を見ておいてほしい』ということはかねてから当社の社長に言われていました。

 生産年齢人口(15歳~65歳)が減っていくなかで、介護業界の人材不足が当施設を襲う時は必ずやってきます。いわゆる2025年問題の一環として、要介護の高齢者が激増することによる介護施設需要の増大と、それをまかなうための介護人材が不足することは目に見えているわけです。

 2025年、さらにその先に向けて、うまく人が循環するサイクルを作りたいですね」

 らぽーる上尾で経営企画推進本部広報企画主任を務める内山昌樹さんです。柔和で明るく闊達な語り口で、地域と当施設の介護人材事情を熱を込めて説明してくださいました。


技能実習候補生と施設との架け橋に留学生にかける大きな期待

 当施設では、この9月からベトナム・ハノイより技能実習候補生3名を住み込みで迎えています。このインターンシップを行うにあたり、言葉の壁をどう乗り越えるか思案しているさなか、縁あってこの夏、東京・新宿で行われたユアブライトのセミナーにお越しいただいたそうです。

「先に技能実習生の導入に着手してはいましたが、留学生ルートにも関心を持っていました。技能実習生はこれまで、介護以外の分野で問題が多かったこともあり、制度運用がまだ不透明な部分があります。ですので、両構えで行っていきたいと考えていたところで、ユアブライトさんからご紹介いただいたんです。いい人材を採用できたと思っています」

 東京都内とは異なり、上尾市近辺では介護職を志す留学生が潤沢にいる状況ではありません。

 ですが、ユアブライトのベトナム人コミュニティに張り巡らせたネットワークから、24歳男性のヒェウさんを推薦することができました。彼の生の声は後ほどたっぷりお届けします。

「技能実習候補生の方々は、今回の90日間のインターンシップの期間に来年度の実習に向けての意思を確認できれば、その後3年間は日本人と同様に雇用することになります。ただし、彼女たちは日本語力がまだあまり高くありません。

そこで、彼女たちの相談役というか、日本人職員との架け橋になってくれる通訳がいればというニーズをお伝えして、ユアブライトさんに紹介していただいたんです。

 ヒェウさん自身も介護職を希望しており、来年春には日本語学校を卒業して介護専門学校に進学します。日本語力はN3の認定を受けています。

8月下旬から2か月間の勤務を見て、これはもう信頼がおけるということで、当施設が社協の修学資金の保証人を務めることにしました。一緒に頑張っていきたいですね」


左が内山さん、右がヒェウさん。内山さんにはヒェウさんのインタビューにも同席していただきましたが、気さくに話せる関係を築いている様子がうかがえました。


社長の肝いりで採用・受け入れ先輩職員の学びにもつながる

 ヒェウさんにかける期待は大きいと語る内山さん。彼をはじめとするベトナム人4名を受け入れるにあたって、当施設ではどのように対応されたのでしょうか。

「まず、今回のベトナム人材採用に当たっては、社長直轄のプロジェクトとし、社長が先頭に立って動きました。採用面接を行うのはもちろん、ご利用者様の全居室を訪問して、一人ひとりへのご説明も行いました。

 それと同時に現場職員から抜擢し、ベトナム人材が生活に慣れるための「生活指導員」、および施設内での仕事について面倒を見る「研修指導員」を任命。合計14名の職員による週に1度の振り返りミーティングには社長も参加しています。ヒェウさんはすでに日本で生活していたため、生活指導は受けていませんが、研修の振り返りには参加しています。

「日本人と外国人という違いはあっても、結局は人と人ですから、歩み寄る姿勢が重要だと思います。仕事をしていくうえで彼らに日本語を習得してもらうことは必要ですが、日本人職員もベトナム語を学習しています。こういう姿勢から生まれるコミュニケーションが、現場の雰囲気をよくしていくわけです。

 また、ベトナム人材に仕事を教えていく中で、日本人職員にもよい風が吹いていると感じています。教えるために今一度基本を押さえたり、伝わりやすいよう知識や技能を整理し直すことで、先輩職員の良い学びにつながっています。相乗効果ですよね」

 実際に受け入れた、現場の職員の方々からはどのような反応があったのでしょうか?

「やはり最初は心配していたようです。しかしヒェウさんは本当に日本語が上手で、技能実習候補生たちの通訳としてとてもよくやってくれています。これはもう率直に、頼りにされていますね。彼自身の介護職への意欲も非常に高いものがあり、性格もまじめで明るいので、先輩職員からも信頼されて、早くもなじんでいるようです。

 ヒェウさんは面接のときから、自分は人と接することが好きで得意なので、介護の仕事にとても興味があるし、合っていると思うと言っていました。実際、ご利用者様にもとてもかわいがられていますね。

それで週28時間の就労枠をフルに働いてもらっているわけですが、シフトの希望を聞いたときに『日曜日だけは早く上がらせてください』というんです。彼女とゆっくり過ごす時間も必要かな、なんて思いながらわけを聞いてみたら、日本語学校の授業の予習をしたいと言うので……これは感心、と(笑)」

 らぽーる上尾では、施設側が受け入れ体制をしっかり作ったことと、ヒェウさんの資質がうまく合致して、ベトナム人材の活用は上々の滑り出しを見せているようです。今後の展望についてうかがいました。

「今のところ、近隣の施設でベトナム人材を登用しているとは聞いていません。ですので、横浜市にあるEPAを活用されている施設を見学してアドバイスをいただいたり、上尾市の日本語教室でボランティアをされている方々にご協力いただいたりと、日々試行錯誤を重ねています。

 今後は、制度運用の実際を見極めながら、留学生と技能実習生の両構えで、先ほど申し上げた『よい人材の循環サイクル』を確実なものにしていきたいですね。留学生が技能実習候補生と職員をつなぐ架け橋になってくれる、1つのモデルケースを経験として蓄積できたわけですから。

ユアブライトさんも今後、事業の展開があると聞いています。引き続きよろしくお願いしますと社長さんにお伝えください(笑)」

 内山さん、こちらこそ、今後ともよろしくお願い申し上げます!

ご利用者様と手のひらをパチン。おとしよりと触れ合うことがとても楽しいと語るヒェウさん、もうすっかり人気者です。


サムライがいないのが残念(笑)介護の仕事はわたしにピッタリ!

 内山さんにたっぷりとお話しいただいて、すっかりヒェウさんをお待たせしてしまいました。

「いつ来るのかなーと思ってました(笑)今日はよろしくお願いいたします」

 いえいえ、そんなにかしこまらずに。今日は取り調べでも何でもありませんから、気楽にお願いします。

「よかったです(笑)」

 ヒェウさんは来日する前は何をしていたんですか? どうして日本に来たいと思ったのでしょう。

「ベトナムでは……旅行ガイドになるための専門学校にかよっていました。南北に長いベトナムの真ん中あたりにあるダナンという都市の出身で、観光のお客さんがたくさんきます。なので、観光の仕事をしようとおもっていました。

 日本にきたのは……サムライ(笑)。日本の文化に興味があって、日本人があいさつをよくする人たちだとも知っていました。なかでも映画でみたサムライのことが知りたくて日本にきたのですが、現代にはいないのですこしがっかりしました(笑)」

 もともと人と接する仕事がしたいと思っていたヒェウさん。ツアーガイドから介護に志望を変えたのも、人と接するという点で共通するからと説明してくれました。

 2017年10月の来日から約1年。その前に、ベトナムでも3か月ほど勉強していたといいますが、とにかく日本語がとても上手で驚かされます。しかしヒェウさん自身はまだまだと謙遜しきりです。

「発音がベトナム語と全然違うのでむずかしいですね。漢字はとにかくおぼえるように、一生懸命やっています。

 らぽーる上尾では介護のしごとと、通訳のしごとをしています。まだ入浴介助はしてませんが、移乗と排泄の介助は教えてもらっています。職員さんはみんなやさしく教えてくれますし、特にわたしが間違ったことはとてもていねいに教えてくれます。ご利用者様もみんなやさしいです。

 介護のしごとは、わたしに合っていると思います。わたしの長所は楽天的、なんでも最後までがんばることです。そして、とてもがまんづよいです。こういうところは合っていると思います。短所はおっちょこちょいなところで、がんばってなおしていきます」

 常に笑顔を絶やさず、自分のことを一生懸命、饒舌に語ってくれます。これまでインタビューした留学生の中でも一番しゃべってくれたかも?

サービス精神が旺盛で、先輩職員やご利用者様にかわいがられているというのもうなずけます。内山さんからお聞きしたヒェウさんの良いところを伝えると、顔を赤くして照れていました。

「平日は、9時から12時20分まで日本語学校があります。14時から19時まではらぽーる上尾で働いて、夜は遅くても23時には寝ます。たくさん寝ないとダメ(笑)。

 休みの日は、YouTubeでゲーム実況を見たりしますね、わたしはゲームはしないのですが(笑)彼女と東京スカイツリーに行きましたし、横浜にも行きました。今度は富士山に行こうと話しています。

 家で復習する時間もありますから、勉強としごとの両立に少し疲れることもあります。でも日本の生活に興味があるし、しごとも楽しいのでがんばれます。

 来年から介護の専門学校に行って、卒業したららぽーる上尾ではたらきます。その先の夢? それは……旅行をたくさんしたいです。今、シリアに興味がある。ベトナムは長い間、戦争に苦しみました。シリアも同じです。戦争に苦しんでいるシリアがどうなっていくのか、いつか見に行きたいです」

 意外なお答えで締めくくりとなりました。きっとヒェウさんは興味関心が駆動力となって行動し、頑張れるタイプなのでしょう。介護職への興味関心、そして適性を軸に、自信をもって成長していってくれそうです。

 そして、そんなヒェウさんを見つめる内山さんが優しく目を細め、目じりを下げている様子が印象的でした。今後ともよろしくお願い申し上げます!(二度目)