在留資格入国管理庁のホームページでは四半期ごとに日本に在留している特定技能外国人の人数が公表されております。

新型コロナウイルスの影響により、当初の想定より人数の増加率が大幅に下回っておりますが、制度開始より緩やかに人数も増加しております。

今回は公表されている統計データより特定技能制度の運用状況について紹介します。

2021年6月末時点での特定技能1号外国人在留状況

国籍別データから読み解けること

2021年6月末時点で、29,144名の特定技能外国人が日本に在留しています。

その国籍順の内訳は多い順にベトナム(18,191名)、フィリピン(2,621名)、中国(2,499名)、インドネシア(2,338名)、ミャンマー(1,265名)、その他の国々と続きます。

この統計データからもわかるように、ベトナム国籍の特定技能1号外国人が圧倒的に多いことがわかります。割合でみてみると全体の60パーセント以上がベトナム国籍となっております。

現在では日本にいる技能実習生の数も国籍別でベトナムが一番となっていることから、特定技能制度でも同様にベトナム人が一番となっております。

その要因として、現在、特定技能1号外国人として日本に在留している外国人のほとんどが技能実習を修了して、特定技能1号外国人となる資格を取得した上で特定技能1号の在留資格申請をしています。

技能実習2号以上の修了者は本来、受検・合格しなければならない特定技能外国人になるための技能試験・日本語試験が免除され、且つ現在は日本への入国すらできないため海外でそれら試験に合格している外国人もそれぞれの国で日本への入国が再開されるまで待機している状況です。

フィリピン国籍の外国人についても2番目に多い人数となっておりますが、フィリピン側の大使館手続きがあり、それらの手続きは適正に済ませていなくても、出入国在留管理庁での審査は通過できるため、特定技能1号の在留資格は取得できますが、フィリピンへ帰国した際などに、日本へ戻ることができなくなるなどの問題が発生する可能性があるため、必ず手続きを済ませる必要があります。

また、フィリピンに関してはフィリピンの法律により、送り出し機関を経由して特定技能制度を運用することが義務となっており、毎月の管理費も発生するため、その費用も受け入れ企業の大きな負担のひとつとなっております。

産業分類別データから読み解けること

また、産業分類別の内訳をみてみると、多い順に飲食料品製造業分野(10,450名)、製造業3分野(5,729名)、農業分野(4,008名)、建設分野(2,781名)、介護分野(2,703名)、その他の国々と続きます。

産業分類別では飲食料品製造業分野での受け入れが圧倒的に多く、この要因となっているのは、新型コロナウイルスの影響により、多くの分野が不況の影響を受けているが、飲食料品製造業分野は基本的に不況の影響を受けにくい分野であり、且つ人手不足が深刻な分野であることからこの人数となっていると言えます。

また、飲食料品製造業分野の一部の企業ではたとえば、お菓子製造の企業などは技能実習生を受け入れすることができる対象の企業に当てはらまないため、特定技能制度にてようやく外国人の受け入れをすることができる企業に当てはまり、受け入れをしている場合もあります。

また、飲食料品製造業分野では特定技能外国人を受け入れする企業が加入必須の協議会への加入が非常に簡単となっており、そのことも飲食料品製造業分野での受け入れ数増加に寄与していると言えます。

製造業3分野については、新型コロナウイルスの影響下でも生産量が落ちていない企業などで、本来は技能実習生の受け入れをする予定であったが、見込んでいた技能実習生の入国の目途がたたないために、現在、技能実習生として受け入れをしている外国人を特定技能1号外国人として受け入れ継続することを決めた受け入れ企業や、他の企業にて技能実習を行っていたがその企業では特定技能の受け入れを検討しておらず、特定技能1号外国人として就労継続することのできる企業を探している外国人を雇用する場合などが考えられます。

農業分野では少子高齢化により慢性的な人手不足が続いており、技能実習生の新規入国の目途もたたないため、特定技能外国人の雇用を始めた受け入れ企業も多いです。

また、農業分野では派遣形態での特定技能外国人の雇用が認められているため、特に冬だけや夏だけの栽培をしている受け入れ企業などにとっては通年ではなく半年だけの雇用などを希望している場合もあるため、そのような企業は費用については直接雇用の場合よりは高くなってしましますが、派遣業をしている企業より特定技能外国人の受け入れをしている場合もあります。

建設分野については、肉体労働であり、現場が毎回変わる場合などは移動時間なども多くなるために過酷な仕事ではありますが、日本人だけでは労働力が足りておらず、特定技能1号外国人の受け入れが多い分野のひとつです。

建設分野の受け入れが想定よりは少ない理由の大きな要因のひとつが、その受け入れにかかる費用と手間です。

建設分野ではキャリアアップシステムの導入や建設特定技能受入計画のオンライン申請など受け入れ企業の手間となる多くの導入・申請手続きがあり、また、それぞれ費用もかかるため、それらが理由となり特定技能1号外国人の受け入れを断念する場合も多いです。

そんな中でも建設分野については特定技能2号へ移行することが認められており、特定技能2号外国人となれば、無期限の在留資格更新や家族帯同も認められているなど多くのメリットが用意されているため、日本政府もこの分野では長期的な外国人の受け入れに前向きであることが分かります。

介護分野では、受け入れ人数こそ現在の人数にとどまっていますが、政府が最も外国人雇用に注力している分野であると言えます。

介護分野にて外国人を雇用することのできる在留資格は現在、「介護」、「技能実習」、「特定技能」、「特定活動(EPA)」の4つがあり、このことからもいかに政府が介護分野での外国人受け入れが急務と考えているかが伺えます。

また、すでに特定技能制度が創設された2019年の時点で政府発表により今後5年間で特定技能制度にて介護人材を6万人雇用すると発表しており、この受け入れ目標の数字は特定技能の14分野でも最も多い数字となっております。このことも踏まえると、今後はこの分野での人数が大幅に増えていくことが予想されます。

まとめ

今回は出入国在留管理庁より公表されている在留している特定技能1号外国人のデータより読み解くことのできる内容について紹介しました。

特定技能外国人の受け入れについては制度の整備も現在進行中であり、建築分野や造船分野では特定技能2号への移行が認められているものの、移行するための要件すら決まっていないのが現状です。

また、現在では新型コロナウイルスの影響もあり、当初、目標としていた受け入れ人数も大幅に下回るペースとなっているため、入国が再開されたのちは政府も受け入れ数増加に向けて特定技能制度の活用をさらに推進することが見込まれます。 技能実習生を受け入れしている企業も今後の外国人受け入れをする際に使う制度案のひとつとして特定技能制度の活用について検討することをお勧めします。

この記事を書いた人

ヤマシタハヤト

ユアブライト株式会社 海外人材担当 主に特定技能に関する情報を発信しております。

ユアブライトのサービス紹介資料を無料ダウンロード

資料をダウンロードする